15年 (ページ17)

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ワンちゃんみたいページ17

じゃあそろそろ帰るね、と立ち上がると
佐野くんもベッドから起き上がった

 寝ててって言ったけど
　

晶哉
「玄関まで送る」
と言って聞かなった。

同じアパートだから何も心配はいらないのに

        『じゃあ、お大事に』 

 晶哉 「………ん」

     私がドアを開けるのを確認して
佐野くんは背を向け、洗面所へ向かう

　
          あ、やばい   

急いでドアを閉めて廊下に出て、階段へ急ぐ。 
早く自分の部屋に戻らないと。

         バンッ！

大きな音を当てて佐野くんがドアを開けて廊下へ出てきた。

    晶哉 
「おい！お前！なんやねんこれ！」     

佐野くんは耳を真っ赤にして
手に持っているふにゃふにゃの冷えピタを前に突き出す。

      佐野くんが怒るのも無理はない。
  私が購入して彼の額に貼った冷えピタは
ただの冷えピタではない。        
かわいいワンちゃんのキャラクターがプリントしてある
子供用の冷えピタだったのだ。    

スーパーでこれを見た時に
「あ、これだ」と思って迷わずかごに入れた。     

晶哉
 「すれ違う人達が笑っとったんはこれやったんか！！」    

『熱冷ましの役割は果たしてるからいいでしょ』   

晶哉
 「そう言う問題じゃねーよ！っておい！待て！逃げんな！」    

『講義の時に冷たくしたお返しですー！じゃあお大事にー！』

   晶哉 
「あ！お前月曜日覚えてろよ！！」          

後ろから聴こえる怒気を含んだ声から逃げるように
階段を駆け下りる。 

 『………ふふふ……あはは！』

    あの顔……… 
あんなスカしていた佐野くんの額にずっとついていた
ワンちゃんの冷えピタ。
 それに気付いた佐野くんのあの顔。     
笑いが止まらない。 
同じ階の住居者に変な目で見られているけど
この面白さはしばらく収まることがないだろう。

          ………そういえば

    あんなに酷い失恋をしたというのに、一度も泣いてない。
 泣きそうになったら怒って、
一人でセンチメンタルになった時には
看病をしてそんなこと考える暇はなくて。
  今は楽しくて…

全部たまたまだろうけど、
ここ数日は全部佐野くんに助けられていた事に気付いた。

      私は口元がにやけるのを手で押さえながら、
自分の部屋のドアノブに手を掛けた。