15年 (ページ16)

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悪い人じゃないページ16

『私こそ、ごめんなさい』

      彼の発言にムカついたのは、
少しでも図星と思う部分があったからだ。

私の恋は誠也くんへの愛情が一番だけど、
少しだけ、ほんの少しだけど15年間、
彼に一途に恋をしていた自分も好きだったんだ。 
だからこそ自分の価値が無くなった気がして寂しかった。     

『佐野くんに言われたことは、
図星だったんだと思う。だからムキになった。 
……でもね、本当に好きなの。誠也くんが。 
年数だけで誠也くんのこと好きなわけじゃないの
わかって、欲しい』

   晶哉
「………うん、わかった。わかっとる」

          しばらく無言が続いた。 

でもこの無言の空間は張り詰めていたり、
虚無感とかそういうので構成された空間では無くて。 
お互いの胸に突っかかっていたものが取れて
ホッとしている穏やかな無言だった

    この人は、悪い人じゃない。     
多分、私だけじゃなくて佐野くんも思ったんだと感じた。        

晶哉
 「……無理矢理、忘れる必要は無いと思うで。俺は」   

ふと佐野くんが呟く。

  晶哉
 「たまに失恋して好きだった相手を急に嫌ったり
卑下する人もおるけど、見とって悲しいから。…
それだったら時間とかが解決する方を選んだ方がええと思う。
健とか良規もいるから、話は聞いてくれると思うし。」     

これは、彼なりの励ましなのかもしれない。 
先程とは違って窓の方を向きながら喋る彼を
少し可愛いと思ってしまう。    

『佐野くんは、話聞いてくれないの？』

  晶哉 
「………俺は………うん……まあ、時間があれば」

   『……ふは、ありがとう』 

 晶哉 
「………」     

気まずそうに
少し斜め下に目を背けながら話す佐野くんに
何だか笑えてきてしまった。