15年 (ページ11)

今日:172 hit、昨日:300 hit、合計:115,054 hit

私の居場所ページ11

私は意外と単純な性格なのかもしれない。
     昨日、15年越しの失恋を経験して悲しみで眠れなかった。

 ……なんてことはなかった。   

怒りに任せて靴を脱いで、
怒りに任せてお風呂に入って、
怒りに任せてベッドに入った。 

ベッドに入っても思い浮かぶのは
誠也くんの笑顔じゃなくて、
あいつの腹立つ顔と言動。   

しくしくと夜中に泣くのではなく、
鼻息を荒げてそのまま眠りについた。

    おかげで身体はスッキリしている。
身体は…だけど。      

お昼のバラエティ番組を見ながらカップラーメンをすする。   
　

『ほんとなんだったのよ、あいつ。くそ』

    今思い出してもムカつく。 
大体なんなのあのネックレス！
安そうな十字架のデザインで
所々塗装は剥がれていて
シルバーというよりも黒色。

あんなダッサイネックレスつけたままどや顔で

「アホやん？」とかさ！

     『お前の方がアホだよバーーカ！！！』     

大声を出してみるけど、
その後は驚くほどしんとしていた

 私の今の空間にはガヤガヤと騒がしいテレビの音と
ゆらゆらと揺れているカップラーメンの湯気だけ。

       『……失恋、したんだよね』       

先程まではイライラしていて
後回しにしていた感情だったけど
こうやって1人で
何も考えることがないと思い出してしまう

  『こっちきーや？って言ってたよね…誠也くん』

      今までは私にしか言っていなかった言葉。

       ” Aちゃん、こっちきーや？”   

” 絵里、こっちきーや？ ”        

私の居場所は私の知らないうちに消えていたなんて。

   ううん、違う。 

もともと誠也くんの隣は
私の居場所なんかじゃなかったんだ。 

誠也くんにとって私は大事な家族、妹の1人。   
こんな頑張って誠也くんの好きそうな服を揃えても、
髪を染めたって意味がなかったんだ。 

何となくは分かっていたんだ。    

「君は誠也くんの妹にはなれても、彼女にはなれない」    

そんな注意勧告をずっと心の奥で言われてた。 
でも私は大音量で音楽を聴くようにして、
知らないふりをしてきた。 

その方が傷つかないから。  

でも、そうやって後回しにしていた分
溜まりに溜まった彼女にはなれない事実のショックは

昨日ズドンと私の心に響いた。

今も響いている