15年 (ページ2)

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特別な人ページ2

何を言っているんだろう、この子は。 

ただ2人、体育座りで隣り合っているだけなのに。 

  誠也 
「君とおはなしするあそび！」     

そうやって楽しそうに私に笑いかける彼。 

自分に合わせて無理に外に連れ出さない彼の優しさは
母親の優しさと同じものだった。

    誠也 
「なまえなんてゆーん？ぼくはせいや」 

  『……A』 

  誠也
「Aちゃんは、何色がすき？」  

 『色……みずいろ……。せいやくんは、何色がすきなの？』 

 誠也 
「ふふ、」     

私の言葉に誠也くんが口に手を当てて笑う。 

何か変なことを言ってしまったのかな。 
そう思い不安になっていると
その様子に気付いた誠也くんが笑いながら首を横に振った。  

 誠也 
「Aちゃんがぼくの名前を呼んでくれたんがうれしかったんよ！」 

  『………』 

   先生 
「誠也くーん！Aちゃーん！帰りのバスに乗りますよー！」  

誠也 
「あ、はーい！」       

そう言って立ち上がり
未だに体育座りをしている私の方へ振り返る誠也くん。 

誠也くんから見下ろされているはずなのに、全然怖くない。     

誠也
 「Aちゃん、こっちきーや？」    

  そう言って手を差し伸べてる誠也くん。
 私はその手を迷わずに取った。 

  その様子を遠目から見ていた幼稚園の先生は声を出して驚いた。 

それもそのはず。

今日一日先生でさえ懐かなかった私が、
たった10分足らずで誠也くんに懐いたのだから。        

それだけ私にとって誠也くんは
今までで初めての人で、特別な人になった。