あたしにケーキは必要ない. ② (ページ9)

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『ずっとずっと、死にたかった。虐められてた訳でも親が毒親やった訳でもない、部活ではそれなりに成功してたしそこそこ勉強もできる方やった』

「…なのに、死にたかったの？」

『そう、死にたかった。ずーっと』

あの頃は毎日、漠然と死にたかった。というか、生への執着が殆ど無に近かった。今思えば何かをきっかけに軽い鬱みたいなものになっていたのかな、とも思う。

『でも、死んだら必ず誰かに迷惑かかるし。それだけは嫌やったから、ぼーっと生きてた。』

「…うん」

『受験期になってもっと病んで、もっと死にたくなって、腕切ったりしようか考えたけど、それも親に迷惑かけることになるから嫌で。結局ギリギリのところで大学合格して、それからは殆ど思わんくなった』

思わなくなったというか、思えなくなったんだと思う。忙しくて、そんなことを思う暇は全くなかったから。そう付け足すと、ふぅんと体育館の床に胡座をかいた小柳が足を組み替えて私にあっけらかんと言い放った。

「よかったよ、マジで」

『……何が、？』

「生きてて。Aが生きててよかったなぁって」

『…うん』

自分でも、そう思う。
私が経験した青春とはまた別の青春を味合わせてくれる、素敵な人たちと出会えたことも。引きずってしまう程に、好きになった人が出来たことも。辛くて怖くて堪らなくなった時に、頼っておいでと言ってくれる人が居ることも。

全部全部、生きてたから、経験できることだ。

「俺まじでAと会ってなかったら、結構人生変わってたかも」

『何それ大袈裟』

「マジだよ。…今から言うみたいな、臭いセリフ言う男にはなんなかった」

え？って聞き返そうとしたら、急にチェストパスでバスケットボールを投げられて。座りながら少し仰け反ってボールを受け止めると、照れ臭そうにくしゃりと笑った小柳がボールの向こうに見える。

「……ありがと、生きててくれて」

…危ない、泣いちゃうところだった。
釣られるように私もくしゃりと笑って、こちらこそ、と返すのが精一杯で。ちょっと乱暴にボールを投げ返すと、大袈裟にひっくり返りながらキャッチする小柳。今はそんな仕草にさえも優しさを感じて、頬が綻ぶ。

『……ねえ、こや』

「んぇ、何？」

『シュート3本勝負、負けたらカメラに向かって愛の告白ね！』

うぅわキツ！と言って笑う優しい彼に、精一杯の感謝を笑顔に込めて___。

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