あたしにケーキは必要ない. ② (ページ8)

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# 青春と感情_小柳ページ8

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「…うぅわ、Aバスケド下手やな」

『……勉強はできる分運動は苦手やの』

「なんそれ腹立つ(笑)」

リングには通ることなくダーン、と重い音を立てて床に落ちた茶色いボールを拾った小柳は、けたけたと笑いながら適当にボールを投げる。……あ、ゴール外した(笑)

『いや小柳も下手すぎやろ(笑)』

「待って今のは普通にダセェ(笑)」

笑い転げる私たちを、同じように笑い転げながら写真を撮るカメラマンさん。大丈夫、ブレてない？とか思いつつ、まあみんな楽しそうだからいっか、なんて。

『あーやば、ほんまにお腹痛い(笑)あんた高校からこんなんやったとか言う？(笑)』

「やー俺っていうか俺ら全員こんなんだったよ、毎日こんなしょーもないことばっかしてた(笑)」

"俺ら"っていうのは、おそらく小柳とにっちとともやんのことだろう。3人は同じ高校で同じ軽音部で青春時代を共に過ごしたと聞いたことがある。あ、千葉ちゃんは1人だけやたらと頭が良い学校だったんだって。

『いいなぁ、毎日楽しかったんやろうなー。』

「まあなぁ、あん時は馬鹿ばっかしてりゃ生きていけた時代だったから。…今もその延長みたいなもんで食わせてもらってるわけだけど」

『そうやね、でもあの身内ネタのやつとか大好きやで私』

「チーズバーガーの絵描き歌？(笑)」

『そうそれ(笑)あんなぶっ飛んだやつ私の周りにはおらんかった(笑)』

「えーまじ？(笑)……てか、Aの高校時代の話あんま聞いたことないなぁ」

『そう？別に特に言うほど面白いこともなかったけど』

興味津々な小柳の視線にやられてふと思い返してみると、夕闇の3人のように特に濃い内容なものは無い気がする。…多分。

『毎日勉強して、友達と色んな話して、軽音に命かけて、……死にたかった、かな』

「……死、」

すぅ、っと、小柳の目が細まって、私を1秒も見逃すまいとじっとこちらを見つめられる。ああ、これって、この感情って、やっぱり可笑しいものだったのか。

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