あたしにケーキは必要ない. ② (ページ15)

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# 青春と歌声_としみつページ15

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『えーいいなぁ、yairiのギターちょーだいよ』

「ぜってぇヤダ、お前も良いの持ってんじゃんそれで我慢しろよ」

『んーMorrisも良いけどさあ、やっぱyairiも弾いてみたいやん？しかもKの方』

「だからさぁ自分で買えよマジで(笑)」

呆れたように笑いながら、としみつが弾いたFコードが青空に舞い上がっていく__ここは、校舎の屋上。

『じゃあお願い！せめて今！今弾かせて！一瞬貸して！』

「はいはいわーったから、貸すだけな？パクんなよ？(笑)」

『やーったぁもーらい(笑)』

「こら！(笑)」

しぶしぶ、といった様子で私にお気に入りのアコギを手渡したとしみつは、なんか歌ってよ、といつも通りのリクエストを投げかけてくる。適当に頷いてコードを鳴らすと、ある曲の一音目だということに気がついた。

『… 夕闇に包まれた街歩いた彷徨うように__』

前奏をアルペジオに変えてからそのままAメロに入る。___私の大好きな曲、としみつの『ピエロ』だ。

ちらりと本家さんの顔を見ると、一瞬驚いたような顔をした後すぐにふわりと優しい笑みを浮かべてくれた。まるで、私のギターを、歌を、包み込んでくれるみたいに。

『… ～いつまでもいつまでもこのメロディー…、』

最後をまたアルペジオで締めくくって、ふ、と息を吐く。

「……すげぇ、超うめーじゃん」

『ありがと、本人の前で歌うとかめっちゃ緊張したけど』

「そんな風に見えんかった、Aってほんと度胸あるな」

『何それ褒めてる？(笑)』

「褒めてしかないわ！(笑)……それに、ほんとに歌が好きなんだなって、伝わったし」

…歌が、好き。

照れ隠しみたく擽ったそうに笑ったとしみつが、私を見つめてそう言う。

確かに、私は歌が好きだ。…でも、私には、それだけじゃ"駄目だった"理由が、ひとつだけあった。

『……でも、大勢の人の前で歌うのは、好きじゃないねん』

…ああ、矛盾したこの気持ちは、どうして生まれてしまったんだろう。

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