あたしにケーキは必要ない. ② (ページ2)

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# 青春とメロディ_ゆめまるページ2

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「ねえ、音楽系の偉人って皆顔怖くない？」

『わかる、あとヨーロッパ系の肖像画になってる音楽家って全員カツラやねんてな』

「…まじ？バッハも？ベートーベンも？」

『あ、ベートーベンは別。』

昼の日に照らされたグランドピアノが、大きく静かに佇む音楽室。
私とゆめまるは、ここで個別撮影だ。

『当時はカツラを被って宮廷で演奏するのがマナーやったけど、それをベートーベンは守らんかったんやって』

「ほぇー、まあ誰だってズラはやだよね。暑いし蒸れるししんどいし。」

『ね、でも日本人はカツラ着用じゃないっていうのも面白いよね、滝廉太郎とか』

「本当だねー。…ねえ、滝廉太郎ってどんな曲あったっけ？」

『花とか？春の麗の隅田川ー…ってやつ』

「お、いいねえ」

ふにゃり、ゆめまるの頬が緩んで、太陽よりも暖かい笑顔が私に向けられる。…あ、今私の背中越しにシャッターを切った音がした。

「Aは裏声でもそんなにうまく歌えるんだね、羨ましいなぁ」

『そう？自分じゃそんな気しやんねんな、ありがと』

「ふふ、どういたしまして」

にこにこ笑うゆめまるにつられて、私もにこにこ。ゆめまると過ごしていると、なんだか時間が経つのがゆっくりになっている気がして面白い。

「…ね、Aはさ、歌うことが好き？」

『うん、大好き』

徐に席を立って、黒板に書かれた五線譜を指でなぞるゆめまるに着いて行くと、また彼は嬉しそうに笑う。フレームアウトしないように着いてきただけなんやけどね、(笑)

「そっかぁ、じゃあ俺も好き！」

『……は、？』

「Aが好きなら、俺も歌が好き」

に、と歯を見せて笑ったゆめまるに、思わず目を丸くしてしまう。…あ、またシャッター切られた。

「俺元々歌は得意じゃなくて、あんまり好きじゃなかったけど。Aが言うなら、好きになりたいなぁって思った」

『…なんで？』

「なんで、って…」

それまで、五線譜を見つめていた視線が、暖かな陽射しに包まれた私に移って、ゆっくりと瞬く。

「Aのこと、好きだから。…あっ、これ浮気発言になる？」

『…ふふ、なるなぁ(笑)』

わかってる、本人はそんなつもりはないってこと。でもついつい照れくさくなって、いじりたくなっちゃうんだよね。ゆめまるはいい人だから。

『…ね、ゆめまる』

「うん？」

『いつか、私抜きでも歌を好きになってあげてね』

「…そうだね、頑張ってみるよ」

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