あたしにケーキは必要ない. ② (ページ11)

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# 青春と互いの本音_虫眼鏡ページ11

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『虫さん何読んでんの？』

「んー？僕はね、星の王子さま読んでる」

『…名前知ってるけど読んだことないやつやわ』

「嘘だあ、それはもう人間じゃないよ」

『それは言い過ぎ(笑)』

んへへ、って笑いながら振り向く虫さんと目を合わせて微笑むと、パシャリと一度だけシャッターを切る音が開いた本の中に吸い込まれる。

私と虫さんの撮影場所は、図書室。

「ていうかAが本読むの好きっていうのはなんか意外だったなぁ」

『そう？学生の時は必ず月に3冊は買って読むようにしてたくらいやったんやけどね』

「ほんと意外だなー。友達とずっと騒いでそうな感じなのに」

『んー、そうでもなかったかな。喋るのは勿論好きやったけど、ずっと人とおったら疲れるやん』

「わからなくもないな、それ」

ぱたん、と虫さんが本を閉じる音が室内に零れ落ちる。それに釣られて振り向くと、全く同じ高さの視線をこちらに向けてくる虫さんと真っ直ぐ目があって、何となくそのまま話を続けた。

『…実は、昔から人間があんまり好きじゃなくて』

「ほう、それは初耳だね」

『言わんかったからね。なんか人間が嫌いっていうか、シンプルに誰かと何かしらの関係を持つのが嫌いで』

「それは恋人関係だけじゃなくて、友達関係とかもってこと？」

『そうそう。…なんか、終わりがあるってわかったら嫌になって。恋人とか1番そうやし、友達関係も未だに投げたくなる時あるんよね』

昔程は酷くないけど、今もたまに誰かと距離を詰め過ぎると、不意に"別れ"を想像してしまって勝手にナーバスな気分に落ち込むことがある。

私なんか居なくたって、誰も困らないのに。私なんか居なくたって、世界は何も変わらず回り続ける。私なんかが居るから、誰かが幸せを逃してるんじゃないかって。

「……"君は、いったん誰かを飼いならしたら、いつまでもその人との関係を大切にしなくちゃ"。」

ぽつり。

虫さんの言葉が、涙のように一滴、陽射しの中に影を作った。

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