旅人の少女は夕陽の街で (ページ6)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:3,161 hit

【四夕目　靴磨きと旅人】ページ6

この通りには

私の見たことのないようなものが

沢山ある。

今まで訪れた場所と比べ物にならないくらい
人が沢山いるのだ。

思わずフードをいつも以上に深く被ってしまう。

すると、後ろから声がかかった。

アーサー「おーい!!リアー!!」

人懐っこく手を振る青年は
一瞬犬に見えた気がした。

「アーサー...私に用か?」

アーサー「別に?少し話そうと思ってな!」
爽やかに笑う彼。

昔の友人と重なった。

「...ああ。」

私は承諾した。

私達は通りの端にあるベンチに腰かけた。

アーサー「そういえば....リアってどうして旅をしてるんだ?」

「...そうだな...居場所が無くなったから...だろうな。」

アーサー「おっと、悪いこと聞いたな...。」

「別に。生きていればよくあるだろう。」

そう、何も私だけではない。

私の友人も孤児だった。
生まれながらにして、居場所を与えられなかったのだ。

アーサー「...そうか。でも流石に寂しいだろう?」

「....ああ、それか...。

実は私には感情の多くが欠けてしまったらしい。そのサミシイという感情も、私にはよく分からない...。」

そう、私の笛の音は確かに寂しい、悲しいというものだった。しかし、それは私の中に感じないのだ。

アーサー「それは...あんたも大変だな...。」

「そうか?でもまあ...思い出したいとは思う。」

通りを見て思う。私もまた、笑ったり泣いたり出来たらと。
涙さえ出なくなってしまったのはいつかさえ忘れてしまったくらい、私には多くの感情というものが見当たらなくなってしまったのだ。

「なあ...少し頼みたいことがある。」

アーサー「ん?俺に出来ることだったら引き受けるぜ!」

「私に...感情を教えてくれないか...?あと、この通りのことも。...お前と話していたら、変わりたいと思った。」

そう、昔の友人に似ている彼なら

もしかしたら私を変えてくれるんじゃないかと思った。

教えてくれる。きっと。

アーサー「勿論だ!俺も手伝うから、少しずつ思い出せばいいと思うぞ!」

「....ああ。ありがとう。」

その時確かに

私は微笑んでいた。