妹、溺愛される

迷子 1 ページ20

コルルさまリクエスト

坂本勇人side

『……ック、ヒック(泣)』


東京ドームでのファイターズとの交流戦。

練習が終わりロッカーに引き上げる途中、前から小さな子どもが泣きながら歩いて来た。

周りを見渡してみたが、親らしき人の影はない。

裏に入れるのは関係者のみなので、どちらかのチームの関係者だと思うけど、ジャイアンツの知り合いにあんな小さい子どもは居なかったので、きっとファイターズ関係者だろう。

初めて来る球場で迷子にでもなったんやろうと思うから声を掛けてみることにした。


「お嬢ちゃん、どうしたん？」


今まで下を向いていた顔がパッと上を向いた。
いきなり声をかけられてビックリしたのか、人見知りなのか怯えた顔で小さな声で、

『…ック、おっきちたら、、はるくん、ないない、ちたのッ』

……えーっと、どっかで寝てて起きたら“はるくん”が居らんくなってた、ってことなんかな？

「とりあえず抱っこしたるから泣きやめるか？
俺の名前は坂本勇人や。
お嬢ちゃんも落ち着いたらお名前言えるか？」

『(こくん) ック、、(控えめに両手を挙げる)』

「抱っこ？」

『(こくん) おなまえ、ゆうなたん。』

「“ゆうなちゃん”？上のお名前言える？」

『うん、たにぐち』

「もしかして、知り合いに谷口雄也っておる？」

『にぃに』

「お兄ちゃんかい(笑)」

まだ警戒されてるのか、小さな声で身体に力も入ったままやけど、とりあえず必要な情報は聞き出せた。

「ファイターズのロッカー分かる？」

『ない』

「分からん？ほんなら一緒行こか」

谷口君の番号は分からんけど、翔と卓なら分かるから電話して迎えに来てもらってもいいけど、別に遠くないし送って行くことにした。

(続く)

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