13.タダヨウ、タダヨウ。 ページ13
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和也「なにしてんの」
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ガタ、と何か音がしたなと思ったときにはもう遅かった。
ひって声が出るのと、暗い闇が深い二宮さんの瞳が私をとらえるのはまるで同時。
腕を組んで、気怠そうに佇んでいる二宮さんは悔しいけれど大人の色気がダダ漏れで怖さと胸の高鳴りが私を襲う。
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資料室の、淡い光。
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和也「ったく…、ただ資料取りに行くだけなのにおっせぇなぁって思ってたら何。新人のくせに密会？(笑)」
「ち、違います！雅紀くんはただ手伝ってくれてただけで…」
和也「あ？」
雅紀「密会なんかしてません！それよりお言葉ですが、二宮さん。ちょっとAちゃんに厳しすぎませんか？」
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横にいたはずの雅紀くんが、サッと私の前に出てまるで庇ってくれるように二宮さんに食いつく。
二宮さんの眉毛がぴく、と微かに動く。
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和也「…厳しい？(笑)」
雅紀「俺から見ても二宮さんの指導は厳しすぎると思います。Aちゃん、しっかり出来てるのに、俺より出来てるのに毎日叱られて、あんなのあんまりです」
和也「ふうん…」
雅紀「もう少し優しくしてあげてください！」
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ああ、雅紀くん。なんて優しい人なの。そんな自らを犠牲にして抗議してくれるなんて。
じんわり温かい何かが胸に広がって行く。
ぐすん、と心の中で涙が溢れそうになってしまう。
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かつん、と革靴が擦れる音。
それは二宮さんが一歩を踏み出した音で。それに気づいたときにはもう彼は雅紀くんの目の前にいて。
少し背が高い雅紀くんを見上げるように、二宮さんが立つ。
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あまりの近さにびっくりして眼を見張る。
そんなリアクションを見て、くっくっくっと喉を鳴らして不敵に笑うのは紛れもなく私の教育担当者。
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背筋が凍るとは
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和也「もう少し優しくしてやれって？」
雅紀「……」
和也「これだから新人は困る」
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和也「“優しさ”の定義も知らないうちは黙っとけクソガキ」
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まさにこのこと。
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和也「栗巻」
「…っ、は、はい」
和也「行くぞ」
「あ、いやでも資料」
和也「そんなゴミ置いとけや。行くぞ」
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猫背の背中を私は必死に追いかける。
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