TOY BOX！

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「知らんと思ってるんかもしれんけど、俺知ってるんよ」

「へ」

「駅で何回か見かけたことあんねん。はじめは彼氏なんかと思ったけど違うんやろ？おんなじ男やったことがないし」

「っ、」



脈絡もなく言われたその言葉に息が詰まった。それと同時に知っていたのか、とどこか気が抜けたような気分になる。



「でもあれは火遊びの類やろ？」

「…」

「誰でもいいなら俺でいいやん、利用だってしてくれれば良い」

「そんなこと、」

「俺に堕ちてきてよ、Aさん」



そうストレートに伝えてくるだるまくんになぜだか泣きそうになった。寂しさを埋める方法を知っている、けれどそれは一時的で本当の意味で埋めることができたわけではない。


なのに今、寂しさなんて感じさせないと言わんばかりに両手を広げて私を待ち望んでいる人がいる。絆されるなと言われる方が無理な話だった。



「……同じ気持ちを返せるかはわかんない、けど。それでもいいんだったら、」

「まじ？嬉しい」



かばっと一度私の顔を見るようにしてからまたぎゅっと今度は力強く抱きしめられる。なんて真っ直ぐな愛情表現。その真っ直ぐさに息ができなくなりそう。



「ちゅーしていい？」

「…」

「嫌？」

「…そういうのは聞くものじゃないと思いますけど」



こつんと額が合わさって、熱を帯びた瞳に囚われる。疑問形で投げかけておきながら逃がす気なんてないくせに、と後頭部に回された手の温もりを感じながら思う。


そうやな、と独り言のように呟かれた言葉と共に角度を変えてその距離はゼロになる。重なった唇がお互い少しかさついていて、それが先程までの緊張をどこか物語っていた。どんどんと深くなる口付けに自然と唇に潤いが戻っていく。



「っは、ぁ、ちょっと、ストップ、」



息を整えたくてその胸板を押せば、だるまくんはぱちくりと瞳を瞬かせる。そして蕩けたように甘く、幸せそうに笑った。
　
　
　
　
　
火の玉ストレートなその愛で、私の心を埋め尽くしてよ
　
　
　
　
　
　

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