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「そろそろ帰ろか」
「そうだね」
参拝した後はおみくじを引いて、甘酒を飲んで射的で少し遊んでそれはそれは満喫した。参拝に来た時間が遅かったものだから時刻は夕方とはいえ辺りは薄暗くなっていた。いつの間にか指と指が絡むように繋がれた手を引かれて、帰路に着く。凍えるような寒さだというのになんだか暑いくらいだった。
「A」
電車を降りてしばらく歩けば閑静な住宅街、特に会話もなくのんびりと歩いていれば名前を呼ばれ隣を見上げる。だるまの瞳がぱちりと瞬き、白い息がゆらゆらと揺らめいた。
「帰らせたないって言ったら、A困る?」
「へ」
思ってもみなかった言葉に、白い吐息がひとつ零れる。私に降り注ぐどこか熱っぽい眼差しがどうにもこそばゆい。喉がカラカラと乾く。
「こま、らないけど」
どうしてか声が震えてしまいそうになり、誤魔化すようにぎゅっと握る手に力を込めた。私の返答にだるまの形の良い唇が緩やかに弧を描く。
「じゃあこっちやね」
「う、うん」
そうして手を引かれるまま私の家とは反対にあるだるまの家へと方向転換する。上擦った私自身の声が余計に頬の熱を上げた。隣では機嫌良さそうに鼻歌が歌われている。
「年のはじめからAと一緒に居れて嬉しいわ」
「き、急になに」
突拍子もなくそんなことを言われ、動揺する。どくどくと動悸が激しくなったのが分かって、深く息を吸い込む。
「たまには素直になるのもええかなって」
こちらを覗き込むだるまの、きらきらとしたビー玉みたいな瞳の中には真っ赤に染まった私が映っている。なんだか見ていられなくなって、思わず視線を逸らした。
「ほ、んとどうしたの」
「んふふ、内緒」
「……なにそれ」
不満気な声を出す私と反対に楽しそうに笑うだるま。ちらり、何気なく見たその横顔が眩しくて、どうしようもなく愛おしかった。
迎春、君来たりて
Happy New Year!
火の玉ストレートなその愛で、【drm】→←迎春、君来たりて【drm】
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たす(プロフ) - ?さん» 表現の仕方が素敵だなんてとっっっても嬉しいです〜😭ありがとうございます🫶🫶のろのろ更新ではありますが頑張ります〜! (5月1日 18時) (レス) id: 9e8649dc81 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - たす様の書く文章の表現の仕方がとても素敵で、毎回楽しく読ませていただいています🫶🏻🫶🏻これからもお体に気を付けて更新頑張ってください〜! (4月30日 19時) (レス) id: f6c1f6723a (このIDを非表示/違反報告)
たす(プロフ) - さんかくさん» 年下だからこその真っ直ぐで押せ押せな感じを書きたくて作った話なのでそう言って頂けて嬉しいです〜!何度も読み返していただけてるのもほんと嬉しい限りです😭😭こちらこそいつもありがとうございます…! (3月24日 23時) (レス) id: 9e8649dc81 (このIDを非表示/違反報告)
さんかく - いけいけごーごーのdrmさんとても新鮮で鼻血でそうです(年下好き)、幾度となく読み返してるこの短編にまた新しいお話が増えて純粋に嬉しいです!今回のお話も何回も読んで噛み砕いてにやにやしたいと思います、いつもありがとうございます☺️ (3月24日 19時) (レス) @page35 id: 035bc710b7 (このIDを非表示/違反報告)
たす(プロフ) - さんかくさん» そんな風に言って頂けるなんて遅刻だろうとお誕生日話更新してよかったです…!こちらこそいつもコメントに救われてます!!今回はちょっぴり幼さの残る夢主ちゃんにしてみました😊嬉しいです、ありがとうございます! (11月8日 23時) (レス) @page27 id: 9e8649dc81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たす | 作成日時:2023年6月18日 21時