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「んっ、だ、るちゃ、くっるし、ぃ」
途切れ途切れになんとかだるちゃんに訴えかける。そしてその訴えが届いたようで名残惜しそうに離れた唇。お互いの口の間をつう、と銀色の糸が垂れる
「A」
「な、なに」
荒くなっていた息を必死に整えていれば名前を呼ばれる。その声色はとても穏やかで甘い。
「時計見て」
その言葉にハッと時計を見れば短針は天辺を、長針は天辺から右へ少し傾いた所を指していた。
「あ!25歳おめでとう」
「んふふ、ありがと」
「実はねケーキ買ってるんだ、食べる?」
「んー、まぁそれはまた後でええかな」
「流石にこの時間だとそうよね」
そんな会話をしながらも一向に私の上から退く素振りを見せないだるちゃん。いや、わかるよ?わかるんだけどなんか我に返ってきてこう、なんていうか。ね?
「A、俺誕生日やね」
「う、うん。おめでとう」
そんな私の心中を知ってか知らずか"誕生日"を強調するだるちゃん。その顔は機嫌良さそうに笑っていた。
「Aの全部、俺にくれる?」
「そっ、の聞き方は、ずるくないデスカ」
「んはは、でもせっかく作ってあげてた逃げ道塞いだのはAやろ?」
するり、腰に触れられ整えたはずの息がまた荒くなる。こちらを覗き込む蜂蜜みたいに甘く艷やかなその瞳に心臓を掴まれている気分だ。
「だるちゃん」
「ん?」
「……好き。私もだるちゃんの全部が欲しい」
「ははっ、ここで煽るかぁ」
きっと今、私の顔は真っ赤なんだろうな。そしてベッド行こっか、なんて言って軽々と持ち上げられる。運ばれる途中、どくどくと私と同じくらいだるちゃんの心臓の音が鳴っていて、なんだ一緒じゃん、と安心する。
「…心臓の音早いね」
「そーゆーのは思っても言わんもんやで、はい到着」
優しくベッドに下ろされた後、覆いかぶさってくるだるちゃん。熱の滲んだ眼差しを向けられつい視線を逸らしたくなるけれど、それは許さないというように頬に手が添えられる。
「A」
「うん」
「大切にするから」
「…うん」
だるちゃんの匂いで埋め尽くされる。現在の時刻を知る術はもうないけれど、夜はまだまだ長いのだろう。
結局の所、愚問愚答
Happy Belated Birthday!
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たす(プロフ) - ?さん» 表現の仕方が素敵だなんてとっっっても嬉しいです〜😭ありがとうございます🫶🫶のろのろ更新ではありますが頑張ります〜! (5月1日 18時) (レス) id: 9e8649dc81 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - たす様の書く文章の表現の仕方がとても素敵で、毎回楽しく読ませていただいています🫶🏻🫶🏻これからもお体に気を付けて更新頑張ってください〜! (4月30日 19時) (レス) id: f6c1f6723a (このIDを非表示/違反報告)
たす(プロフ) - さんかくさん» 年下だからこその真っ直ぐで押せ押せな感じを書きたくて作った話なのでそう言って頂けて嬉しいです〜!何度も読み返していただけてるのもほんと嬉しい限りです😭😭こちらこそいつもありがとうございます…! (3月24日 23時) (レス) id: 9e8649dc81 (このIDを非表示/違反報告)
さんかく - いけいけごーごーのdrmさんとても新鮮で鼻血でそうです(年下好き)、幾度となく読み返してるこの短編にまた新しいお話が増えて純粋に嬉しいです!今回のお話も何回も読んで噛み砕いてにやにやしたいと思います、いつもありがとうございます☺️ (3月24日 19時) (レス) @page35 id: 035bc710b7 (このIDを非表示/違反報告)
たす(プロフ) - さんかくさん» そんな風に言って頂けるなんて遅刻だろうとお誕生日話更新してよかったです…!こちらこそいつもコメントに救われてます!!今回はちょっぴり幼さの残る夢主ちゃんにしてみました😊嬉しいです、ありがとうございます! (11月8日 23時) (レス) @page27 id: 9e8649dc81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たす | 作成日時:2023年6月18日 21時