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1時間、2時間と経っても誰ひとりとして帰ってこなかった。…外に出てみるなら今がチャンスじゃない?なんて悪魔の囁き。すっからかんのアジトには私が出かけることを咎める人はいない。
ちょっとだけ、ちょっと出かけるだけ。すぐ帰ってくるから、そう誰に言うでもなく言い訳をして私はアジトを飛び出した。久しぶりの外の空気、夜風がなんだか気持ち良い。
数週間前の記憶を辿りながら夜のロスサントスを歩く。だるまさんのバイクに乗って連れてきてもらったものだから、あまりこのアジトの位置が分かっていないんだよなぁ。まぁ適当なところでUターンして帰ろう、そんな風に気楽に考えていた。この街の夜にしてはやけに静かだ、そんな違和感を感じられない程には私は外に出ていなかった。
あれ、つけられている。そう気づいたのはそろそろアジトへUターンして帰ろうかなと思い始めたときだった。少し歩くスピードを上げれば後ろからもスピードを上げて歩く複数の音。
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はぁはぁ、と緊張も相まって息が荒くなる。なんとか撒こうと走って路地裏に隠れる。
「おい!どこ行きやがったあの女!」
「まだ遠くに行ってねぇはずだろ!」
「お前ら絶対逃すんじゃねぇぞ」
すぐ近くまで追いかけられていたのだろう、ドタドタという足音と共に大声で騒ぎはじめたいかにもな格好をした男達。がんっ、と苛立ちをぶつけるように蹴られた音にびくりと後ずさる。
「ひ、」
思わず漏れた声に慌てて自分の口を塞ぎこっちに来るな、と息を潜める。けれどそんな祈りは虚しくすぐに見つかってしまった。
「おいおい、こんなとこにいやがったのか」
「可哀想に震えてんじゃねぇか」
「ふーん、こいつが "あのボス"のね」
「てか連れて行く前にちょっと遊ばね?」
「はは、そりゃいいな」
ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべた男達が近づいてくる。逃げないといけないのにがたがたと震えた足は言うことを聞いてくれない。
乱暴に腕を捕まれ、声出したらわかってんだろうな?とナイフを突きつけられた。どうしてこうなったんだ。こんなことならあのまま大人しくしていればよかった。後悔先に立たずとはまさにこのこと。
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たす(プロフ) - ?さん» 表現の仕方が素敵だなんてとっっっても嬉しいです〜😭ありがとうございます🫶🫶のろのろ更新ではありますが頑張ります〜! (5月1日 18時) (レス) id: 9e8649dc81 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - たす様の書く文章の表現の仕方がとても素敵で、毎回楽しく読ませていただいています🫶🏻🫶🏻これからもお体に気を付けて更新頑張ってください〜! (4月30日 19時) (レス) id: f6c1f6723a (このIDを非表示/違反報告)
たす(プロフ) - さんかくさん» 年下だからこその真っ直ぐで押せ押せな感じを書きたくて作った話なのでそう言って頂けて嬉しいです〜!何度も読み返していただけてるのもほんと嬉しい限りです😭😭こちらこそいつもありがとうございます…! (3月24日 23時) (レス) id: 9e8649dc81 (このIDを非表示/違反報告)
さんかく - いけいけごーごーのdrmさんとても新鮮で鼻血でそうです(年下好き)、幾度となく読み返してるこの短編にまた新しいお話が増えて純粋に嬉しいです!今回のお話も何回も読んで噛み砕いてにやにやしたいと思います、いつもありがとうございます☺️ (3月24日 19時) (レス) @page35 id: 035bc710b7 (このIDを非表示/違反報告)
たす(プロフ) - さんかくさん» そんな風に言って頂けるなんて遅刻だろうとお誕生日話更新してよかったです…!こちらこそいつもコメントに救われてます!!今回はちょっぴり幼さの残る夢主ちゃんにしてみました😊嬉しいです、ありがとうございます! (11月8日 23時) (レス) @page27 id: 9e8649dc81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たす | 作成日時:2023年6月18日 21時