モヒートを飲んだ朝 (ページ6)

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Shintaro_side

「この仕事はすぐ辞めない。樹にも辞めて俺の家に来いって言ってもらったけど、それはなんか違うなって思って。仕事は続けるけど、昼の仕事探そうと思ってる。ちゃんと仕事探して、決まったらここを辞めようと思うんだ。」

「そりゃ俺はいいけど、北斗はそれで大丈夫なのか？もう体売るのは…しかも田中樹だって他の客にお前のことを…」

その先の言葉を考えて少し詰まってしまった。
言わなくてもきっと、本人たちが1番わかっていることをあえて言葉にするとこは違う気がした。

「俺は大丈夫。今までお世話になったお客さんにも、ちゃんと区切りつける時間欲しいし。樹にはもちろん辞めて欲しいって言われたけど、俺がちゃんと区切りつけたいからって話したら、渋々だったけど了承してくれた。ここで辞めたらさ、誰かにまた寄りかかったまま生きるようになりそうで」

北斗が何故か一段と大人に見えた。大きくなったな、なんてまるで父親のような思いがよぎって、自分も歳をとったことを実感した。

あの頃はまるで捨てられた犬みたいな顔をしていた。不幸や不安、そんな負の感情全部を集めて身にまとって、そのまま消えてしまいそうな儚さを感じる子どもだった。

少しでもバランスを崩せば、何もかも崩れて消えてしまいそうな…そんな子どもだったのに。

改めて北斗を見ると、相変わらず少し儚げな表情は残るものの、顔つきは着実に大人になり、身体も大きくなった。

「今は…大切な人ができたから

生きたいと思える理由と存在ができたから

変わりたいんだ」

北斗から前向きな言葉をいつぶりに聞いただろう。

いつもどこかで諦めていて。

拒否することもなく、なんでも受け入れて生きてきた北斗が、変わりたいと言っている。

「ほんと…

大きくなったな…北斗」

自分から出た言葉は、少し震えたような声で聞こえた。