モヒートを飲んだ朝 (ページ4)

今日:30 hit、昨日:23 hit、合計:42,345 hit

…53… ページ4

Shintaro_side

「でも慎太郎ほんと容赦なかったよな。初めての人間に対してする抱き方じゃなかった」

あの時田中樹に言ったように、分からせる意味で少し乱暴に抱こうとは思った。
でもそれだけじゃなかった。

抱きながら北斗の表情を見た時、不意に中学生の時の北斗の姿が浮かんだ。
同時に中学で働いていた記憶も呼び起こされた。

何をこんな所でやっているんだと問われているように感じて、自分がとても惨めに思えた。

そんな色々な感情や問いが急に襲ってきて、苦しくて苦しくてどうしようもなかった。

その襲いかかってくる色々な感情を誤魔化すために、北斗にぶつけてしまった。
だから今でも少しゾッとするくらいに、乱暴に抱いてしまった。

「それに関しては頭が上がらないよ。だから無意識に北斗には色々手を尽くしちゃったんだよな…他のスタッフが不審がるぐらいに」

「そうだね。それからは本当に至れり尽くせりで、慎太郎には感謝してる」

「だからまずカードを渡そうと思ってる奴の情報は全部チェックして見定めた後に、北斗に了承貰ってただろ？でも急に北斗から提示してきた奴なんて、気になって当然だろ。調べに調べてもらったよ。そしたらまあずるずる出てくるもんだ」

ある程度の情報は本人に提示してもらっているが、その情報をより詳しく調べさせた。知っている中学校の名前が出た時には、驚き過ぎて息が詰まった。もしかしたら俺のことも知っているかもと思うと、眉間の皺が深くなっていった。

「でも…俺が樹に好意寄せてるなんて分かんないだろ？」

「覚えてない？うちの契約書にサインしてる時に言ったこと。
俺が本当に後悔しないか聞いたらさ、"本当に俺には何もないし、明日死んでも後悔しない。だから使えるだけ使って欲しい。でももし1つ我儘を言うなら、俺が自分から何かを示した時はよっぽどのことだから、その時は手を貸して欲しいかな"って」

「あぁ…そんなこと言ったっけ…」

北斗はあまり覚えては無さそうだった。
でも俺はその事を覚えていて、それが今なんだと思ったのが、北斗が田中樹を店に紹介した時だった。

それからの北斗の様子やジェシーからのぼやきを聞けば、なんとなく察しはつく。