モヒートを飲んだ朝 (ページ3)

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Shintaro_side

「まずはありがとう…その樹のこと。
慎太郎が樹に仕掛けてくれなかったら、もう二度と店に来なかったかもしれない。

でも…」

その先の言葉を躊躇った北斗は、少し体を動かして座り直した後、ゆっくりと口を開いた。

「なんで慎太郎が樹のこと知ってんの。

てか俺たちのことどこまで…」

北斗が言い切る前に、俺はあえて話を始めた。

「正直迷ったんだ。北斗を雇うかどうか」

「え？」

突然違う話題が切り出されたことに驚いたのか、北斗の開かれた口が行き場を失ったように、小さく開けられたままだった。

「北斗を雇うか雇わないかの話になった時、高校生だったことはもちろんだけど、それよりも…

雇うことでこれから北斗と接する度に、俺は教師であったことを思い出さなければならない」

自分が教師であったことなんて、本当に夢だったんじゃないかと思うほど、もうこの仕事に染まりきっていた。

人生で見れば僅かな期間でしかなかった教師としての自分。

でもずっと憧れていた教師の仕事は楽しくて仕方なかった。

でも今は忘れてしまうほど昔のことのように思えて、それがある意味助かっていた。

教師を諦めざる得ない状況が揃いに揃ったあの日から、もうとっくに覚悟は決めていたはずだった。でもふとした時に、俺はまだ心の奥のほうで、言葉では上手く表現できない思いが確かにあることも事実だった。

「自分が追っていた夢の面影を北斗で感じることに耐えられるのか…

そもそも北斗をこの道に連れ込むことの罪悪感とその責任を負えるのかって、色々考えたよ。

でも話を聞いて、なんだろうな…なんか気がついたら雇うって言ってたんだよな」

「うん…あの時俺の話全部聞いてくれて、優しいなーとか思ったけど、その日のうちに慎太郎に抱かれたのはびっくりした」

「だって夜の経験あるけど、本番行為自体はやったことないとか言うから、どんなもんか教えとかないと、引き返すなら早い方がいいかと思って」

高校生になったばかりの北斗から夜の経験があるだなんて言われるもんだから、話をされた時には少し身を構えたけど、本番行為以外の行為を提供しただけと話されて、少し強ばっていた自分の肩がわかりやすく下りたことを覚えている。

本番なしでも大丈夫なようにしてくれたのは、母親がくれた最後の優しさだったのかもなんて、少し笑いながら言う北斗が余りにも弱々しく見えて、あの時は思わず目を逸らしてしまった。