モヒートを飲みたい夜

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｢で、京本くんと何の約束してんの｣

｢…あいつ結婚すんだって｣

｢おっと…まじか｣

｢だから結婚届けの証人の欄にサインくれだと。よりによって俺を選ぶあたり、あいついいセンスしてるよな｣


きょもから2つ年上のどこぞの知らない女と結婚をすることになったと聞いたのは、ほんの数週間前だった。

元々彼女がいることは知っていたけれど、結婚まで踏み切るようなそんな素振りはみせてはいなかった。
そもそも20代後半で考えなくもないが、いざ言われるとあまり実感は沸かなかった。


俺ときょもは入社式の時に知り合ってから、同じ部署に配属になったこともあって、気がつけば誰よりも長い時間過ごすようになるほど親交を深めた。締め切り間近の書類と戦った夜も、上司に怒られた日の飲み会も、すべてにきょもはいた。

俺は元々男に恋心なんて抱く柄ではなかったけど、どんな女よりも綺麗な肌にすっと通った鼻筋。濁りのない声。何よりも居心地の良さが、気持ちを揺るがした。

好きなのかもしれないと思えば、そうとしか考えられなくて、全ての行動や発言に愛おしさすら感じた時は、いよいよだと思った。

俺も有難いことに女に困るほどモテない訳では無い。でも何故かきょもに惹かれた。きょもだけは特別に見えた。


もちろんきょもは女が好きな訳で、モテるあいつに彼女ができない訳はなかった。

きょもに彼女が出来たとわかった時、俺は初めてここの店の扉を開けた。ほとんどヤケになっていたせいか、女遊びでもしたら少しは紛れるかと思って飛び込んだクラブは全く気乗りせず、結局すぐに出てきて余計虚しさを抱えたまま、酔うだけよった体を引きずりながら歩いてた。

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