…31… ページ31
｢ところで田中さん。うちのホクトはどうですか？失礼などありませんか？｣
｢いえ…十分過ぎるくらいです｣
｢ならよかったです｣
俺がここに招かれた理由を今も必死に考えていた。未だに森本の考えることが見えなくて少し恐怖さえあった。高地という黒服が喋ってしまったホクトの過去を口封じでもするつもりなのか。
けれど森本は高地が喋り続けているのを止めずに物陰で俺らの会話を聞いていた。なら俺の最近の行動が目に余るのか。それなら少し納得がいく。とにかく次に言われることが気がかりで仕方なかった。
｢"俺はなぜこんなところで、こんな男に呼び出されてるんだ"そんなこと考えてます？｣
｢え？｣
｢当然です。いきなり店の者に誘われたら驚かれますよね｣
まるで思考を読み取られているように話が進むことで、俺は常に呆気を取られて上手く返事すらできなかった。
ワインは味わうどころか一気に飲み干してしまっていた。すると森本はすかさずグラスにワインを継ぎ足し、適度な量まで注いだ後、早速本題に入りましょうと言いながら両手を前で組んだ。
｢ホクトは僕が連れて来た子です。ホクトとは彼が中学生の頃に出会いました。元々僕は教師をしていたんです。いわゆる教師と生徒の関係ですね｣
｢教師…だったんですか？｣
｢えぇ。ホクトと出会った中学が最初の就職先でした。でも僕は結局1年で教師を辞めました。辞めたと言うより辞めざる得なかったと言うのが正しいです｣
換気扇の回る音と外の騒がしい女と男の騒ぎ声が微かに聞こえるこの部屋で、森本がワイングラスをテーブルに置く音ははっきりと耳に伝わった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 875人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くれよん(プロフ) - 大好き程度で結婚すんじゃねぇぞ！！さん» すいません。コメントありがとうございます。遅くなりましたが、更新しましたのでぜひご覧ください。 (2022年12月25日 21時) (
レス) @page45 id: afe818a83d (このIDを非表示/違反報告)
大好き程度で結婚すんじゃねぇぞ！！ - 更新がんばってください！！わたしはこのお話が大好きです(°▽°) (2021年3月12日 22時) (レス) id: feb3810b9b (このIDを非表示/違反報告)
くれよん(プロフ) - ハローパラレルさん» そう言って頂けて嬉しいです！更新頑張ります！ (2021年3月2日 1時) (レス) id: efb92cae20 (このIDを非表示/違反報告)
ハローパラレル(プロフ) - くれよんさん» 更新ありがとうございます！面白いです！今、一番好きな作品です！ (2021年2月28日 14時) (レス) id: a702828ef9 (このIDを非表示/違反報告)
くれよん(プロフ) - ハローパラレルさん» コメントありがとうございます。遅くなってしまい申し訳ございませんでした。お話を更新しましたので、引き続き応援よろしくお願いします！ (2021年2月27日 22時) (レス) id: fe5efae8c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くれよん
| 作成日時：2020年12月28日 23時
