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｢なんか最近スパン短くない？｣
そうホクトに言われるのも無理はなかった。自分でもそう思っている。不思議なほどお金は減っていくけど、ここのベットの寝心地はいいし、備え付けのボディーソープはいい香りだ。明るすぎない照明と程よい室温。この完成された部屋が俺を引きつけることと、この部屋の主がそれをさらにそうさせていることは充分に承知の上だ。
｢その理由は言わなくてもよくわかってんだろ｣
｢まーねー｣
そう言って首に絡まるように伸ばしてきた両腕は俺を引き寄せて、如何にも自然に感じた頬の柔らかい感触は少しだけ熱を残して離れた。その少しの熱に感化されて、今度はさらにと言わんばかりにホクトの唇に自分の唇を押し付けた後、お互い舌を絡ませていくことは容易だった。
｢んっ…なぁお前って何歳なんだよ｣
｢…っは？今さらなに？｣
お互い徐々に息が上がって、絶える息の中で吐息混じりに問いかけた質問に、ホクトの眉間に深い皺ができてくるのわかった。
｢どこから来たんだ。いつからこの店にいる？｣
｢なに樹…やめてよ｣
｢お前の本名は…｣
｢やめろって｣
こんなホクトを見るのもはじめてだったし、こんな自分を見せるのもはじめてだった。
知らないことを知らないと突きつけられた時、当たり前だったことに疑問を持って、それが無性に虚しさに苛まれてしまった。
｢ホクト…俺は…｣
｢樹…落ち着けって｣
ただの客が客としての立場を見失えばきっとここにいる資格はなくなる。それすらも分からなくなるくらい頭に血が回っていない。
｢今日は帰ったほうがいい…帰って｣
そう言ってベットから抜け出して行ったホクトが僅かに残した温もりに縋るように、俺はベットに体を沈めて大きく深呼吸をした。
馬鹿で単純だ。
あのジェシーという黒服に煽られて、それに素直に感化された。
ただ拠り所が欲しかった。埋められないこのなんともいえない喪失感と熱を向ける場所が。ただそれだけなのに今ホクトのことを考えると、こんなに胸苦しいのは何故なんだろう。
もう遅いのかもしれない。もうとっくに溺れているのかもしれない。どこの誰とも知らない、お金を払って体だけの関係を持った男に…
｢これじゃあどっかのクソみたいな親父と変わんねーな｣
心臓が溶けるという表現はあまりに大袈裟かもしれない。けれどそう思うほどに、痛みと苦しさが胸にのしかかっているようだった。
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くれよん(プロフ) - 大好き程度で結婚すんじゃねぇぞ！！さん» すいません。コメントありがとうございます。遅くなりましたが、更新しましたのでぜひご覧ください。 (2022年12月25日 21時) (
レス) @page45 id: afe818a83d (このIDを非表示/違反報告)
大好き程度で結婚すんじゃねぇぞ！！ - 更新がんばってください！！わたしはこのお話が大好きです(°▽°) (2021年3月12日 22時) (レス) id: feb3810b9b (このIDを非表示/違反報告)
くれよん(プロフ) - ハローパラレルさん» そう言って頂けて嬉しいです！更新頑張ります！ (2021年3月2日 1時) (レス) id: efb92cae20 (このIDを非表示/違反報告)
ハローパラレル(プロフ) - くれよんさん» 更新ありがとうございます！面白いです！今、一番好きな作品です！ (2021年2月28日 14時) (レス) id: a702828ef9 (このIDを非表示/違反報告)
くれよん(プロフ) - ハローパラレルさん» コメントありがとうございます。遅くなってしまい申し訳ございませんでした。お話を更新しましたので、引き続き応援よろしくお願いします！ (2021年2月27日 22時) (レス) id: fe5efae8c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くれよん
| 作成日時：2020年12月28日 23時
