モヒートを飲みたい夜

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そんなこと、俺が1番思っている。

ホクトが初めて俺に声をかけた時に言ったように、ホクトにつけられた値段は相当なものだ。

俺もなんとか切り詰めてホクトに会っている。それでも金さえ払えば文句はないだろうなんて思って通っていたら、案の定何も言われなかった。

だからたかがその程度のことだろうとは思っていたが…


｢なんか知りませんけどちゃんとお金は払ってるし、ここ数年通ってて特に問題起こした訳でもねーだろ。客としてちゃんと接してる。なんかそれで問題でもあんの？｣


｢ホクトがおかしいんだよ。前々からちょいちょい変だなとは思ってたけど、最近は特に。よくよく考えたらお前と会うとあいつの様子がおかしくなる。何して何言ってんのか知らんけど、ホクトはうちの大事な人なんであんま変な真似はしないでもらえます？｣


そんなことを言われても、実際のところあまり実感はなかった。

ホクトはいつも同じだ。最初からどこか達観してる部分があって、変に落ち着いてる。でも不意に拙さや脆さが見えるのに、決して弱さは見せない。だから俺はホクトに弱さとか惨めなところも全部見せることができている。


｢俺はホクトのことを何も知りません。ホクトが変とかそんなことも俺には分かりません。だってただの客なんですから｣


俺はあの店にいるホクトしか知らない。だから今知っているホクトが本当のホクトかどうかなんてこともわからない。


｢だからそんな威嚇されるような覚えもないですし、ホクトが変ならそれはお店側の問題でしょ｣


そのことをよく分かっているのに、苛立ってしまっているせいか、棘のある言い方しか出来なかった。
客だという事実をこんなにも突きつけられたことは今までなかったからかもしれない。

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