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「うまっ」
「そりゃよかった」
目の前に並べられた料理の横には、俺が集めた香辛料たちも用意されていた。
「慎太郎っていつの間にか料理できるようになってったよね」
「あーなんか北斗の家泊まること多くなってから、ご飯くらいは作ろうとか思ってやってたら、レパートリーいつの間にか増えたかも。
でもいつまで経ってもその香辛料を使いこなして、美味しい料理を作り上げるのはできないけど」
そうは言っても、こうして毎回テーブルに用意してくれる辺りはやっぱり気遣いができる男だ。
「てか慎太郎も明日休みだろ?」
「うん。なんで?」
「明日ソファー見に行きたいんだけど」
「ソファー見に行くの?」
「え、だってそもそも変えた方がいいって言ったの慎太郎だろ?」
「だってソファーでもう寝ないからいいじゃん」
そう言われてあからさまに動揺したのは俺だった。
恋愛なんて随分と離れた生活をしていたから、そういうことを不意に言われてしまえば、あっという間に自分の顔や耳まで熱を持ち始める。
「ベット…シングルだけど?」
「知ってる」
「俺ら無駄にデカい体してるから結構辛くない?」
「あ、一緒には寝たくない感じですか?」
「そういう事言ってんじゃなくて」
「いーじゃんくっつけば」
思ったことをそのまま素直に口に出して言えるところは、本当に慎太郎のいいところだと思う。
「ベットから落ちても知らないから」
「落ちる時は一緒だから大丈夫」
「巻き込むなよ」
今日は朝から本当に色々なことがあり過ぎて、どんな1日より長く感じた。
でもこんなくだらない話や言い合いをしている慎太郎とのこの時間だけは、ゆっくりとした時間であって欲しいと思う。
そんな話をしながら、慎太郎はさり気なく冷蔵庫からボトルを出てきた。
「まあとりあえずこれでも飲もうよ。一応大切な記念日だし」
こうやってカッコつけすぎずに、さらっとワインなんか用意してくれて、しっかり特別な日を大切にしてくれる。
俺なんか用意どころか、そんな気まで回ってなかった。
本当に慎太郎には文句のつけようがない。
「慎太郎、本当に俺でいいの?」
「え、いいよ?」
「ほんと?」
「じゃないと嫌だし」
「ふーん」
「あ、今嬉しそうな顔した」
「してねーよ」
この幸せがあるなら
今日の本屋での出来事は
忘れてしまおうと決めていた。
でも俺のズボンのポケットには
しっかりと値札が入っていたのも事実だった。
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くれよん(プロフ) - 腐女子ちゃんさん» コメントありがとうございます!毎日更新目標に頑張っていこうと思います!本当にありがとうございます(^^) (2020年5月24日 17時) (レス) id: 664958a767 (このIDを非表示/違反報告)
腐女子ちゃん - 面白いです!これから関係複雑になっていきそうですね…作者さんのペースでいいので更新頑張ってください!応援しています! (2020年5月24日 8時) (レス) id: 7a4cdc3ef8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くれよん | 作成日時:2020年5月24日 0時