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俺は相当単純なようで、慎太郎が家で待っていると思えば、今まであれだけついていたため息を1度もつくことなく、キーボードを打つ手は軽くなった。
気がつけば、自分が予想していたよりも1時間以上も早く仕事が終わっていた。
すぐにパソコンの電源を落とし、会社を出て駅に向かう途中で、慎太郎に連絡を入れようとスマホを見ると、予約していた本が届いたとメールが届いていた。
家で待つ慎太郎が思い浮かんだが、ちょうど読んでいた本を読み終えていたこともあって、はやる気持ちを抑えつつ、予約していた書店に立ち寄った。
すぐに本を受け取り、本を鞄に仕舞いなが歩いていると、ふと自分の目に留まったのは、髪の毛1本すら黒であることを許さないかのように、綺麗な金色に染まった髪をした男の後ろ姿だった。
正確に言えば、金髪だからという訳ではなく、その男の襟からヒラヒラと動く値札が目に入ったからだ。
その値札を教えてあげれるほどの優しさなんて持ち合わせていなかったし、何よりそんな金色の髪をした見知らぬ男に話しかけるような性格でもない。
何より俺は今、家路に急いでいる。
俺の頭は慎太郎が何を作って待ってくれているかでいっぱいだった。
その男は何冊か漫画を抱えているようで、それを落とすまいとゆっくりと歩いていた。
当然早足の俺は、彼を追い抜かそうと更に足を早めた時、俺にはない優しさを持った見知らぬ女性が、その男に声をかけた。
｢あのー襟元に値札ついてますよ？｣
｢え？あっありがとうございます｣
その声は見た目とはかなりギャップがあった。
男性にしたら高めで、澄んだような声。
その声をなぜか懐かしいと感じ、俺の足は彼を追い抜かす前に自然に止まっていた。
声をかけてくれた女性にお礼を言った後、彼は漫画を片手で持ち、空いた手を襟元に伸ばしていた。
両手でやっと支えられていた漫画たちは、彼の反対の手が値札に届く前に崩れていき、床に落ちていった。
それを慌てて拾おうとした彼の横顔がやっとその時に見えた。
その横顔を見た瞬間に自然と声は出た。
｢大我…？｣
俺が口にした名前に反応して、こちらに顔を向けた彼を見て、さっき聞いた声を懐かしいと感じたことが、すぐに理解できた。
｢北斗…？｣
彼の持っていた漫画は床に落ちたまま
もちろんあの値札もゆらゆらと彼の襟元で揺れていたが
俺たちだけは時間が止まったように
お互いに固まって動けなくなっていた。
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くれよん(プロフ) - 腐女子ちゃんさん» コメントありがとうございます！毎日更新目標に頑張っていこうと思います！本当にありがとうございます(^^) (2020年5月24日 17時) (
レス) id: 664958a767 (このIDを非表示/違反報告)
腐女子ちゃん - 面白いです！これから関係複雑になっていきそうですね…作者さんのペースでいいので更新頑張ってください！応援しています！ (2020年5月24日 8時) (レス) id: 7a4cdc3ef8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：くれよん
| 作成日時：2020年5月24日 0時
