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taiga_side
「きょもさ…いい加減に漫画どーにかしろよ。俺の家来る度に漫画買いすぎだろ。しかも全部置いて帰るし」
「樹が読みたいかなっと思って親切心で置いてんじゃん。そこは大目に見てよ」
決まって樹の家に行く時だけ買っている漫画は嫌でも溜まっていく。
その漫画たちは樹の家で積み重なっていた。
「てかいつの間にきょもって新刊とか買うようになったんだな。前まで一気に買ってたのに」
「あぁ…まあそーゆーのもいいかなって」
一気買いなんていういつの間にか勝手に確立していた自分の決まりごとは、いとも簡単に崩れ去っていたことに、言われるまで気が付かなかった。
俺のそんな些細で脆いルーティンなんて知らぬ間に変えられていた。
「まぁそんなことどうでもいいんだけどさ、今度のライブで出したくって、ちょっと作ってみたんだけど聴いてみてくれよ」
そう言いながら樹がワイヤレスのイヤホンを片耳だけ俺の目の前に投げた。
そのイヤフォンを耳につけると、樹らしい雰囲気が溢れた曲が流れてきて、それを聞いている間、樹はよっぽどの自信作なのか、その曲の感想を早く聞きたいとばかりにこっちを見ながら待ち構えていた。
「いいじゃん。派手目の曲でインパクトあっていいと思うし。俺的にもうちょい変えたいなってとこもあったけど、やっぱエッジ効いた曲作らせたら樹は天才だね」
「だろ!?やっぱきょもは分かってくれてるわー。そんな褒めてもなんもでねーからな!」
いかにもっていう表情で満足そうにしている樹を見ながら、耳元に音楽を流し続けるイヤフォンにそっと触れながら不意に思い出した。
『なぁ大我。今度でいいからさ、この曲カバーしてよ』
『北斗が言うなんて珍しいじゃん。別にいいけど急にどうしたの?』
『いや…これを歌ってる大我見たいなってシンプルに思っただけだよ。この歌の歌詞好きなんだよね』
『なんて曲?』
『これで流すから聞いてみて』
この何年前かの北斗との記憶。
急にそんなことを言い出してきたかと思えば、北斗はそっと隣に座ってきてイヤフォンを片耳だけ渡してきた。
まだワイヤレスイヤホンなんてものは主流でもなんでもなくて、有線のイヤフォンを半分ずつ使って聞いたあの時。
イヤフォンの長さが自然と俺たちの距離を縮めて、肩が触れるか触れないかのあの距離感。
「ここ!なぁきょも!ここが俺のイチオシ!」
でも今は
左耳は樹
俺は右耳
隣にいなくても曲を共有できる便利な時代になった。
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くれよん(プロフ) - 腐女子ちゃんさん» コメントありがとうございます!毎日更新目標に頑張っていこうと思います!本当にありがとうございます(^^) (2020年5月24日 17時) (レス) id: 664958a767 (このIDを非表示/違反報告)
腐女子ちゃん - 面白いです!これから関係複雑になっていきそうですね…作者さんのペースでいいので更新頑張ってください!応援しています! (2020年5月24日 8時) (レス) id: 7a4cdc3ef8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くれよん | 作成日時:2020年5月24日 0時