脱出。〈CM〉 ページ5
車に乗り込んでやっと電波の届く場所まで出ると
ケータイに入ったメール着信の多さにビックリした。
文字から伝わる大騒ぎ。
みんなから届いた
僕の失恋を哀れむような文章の数々。
CM「・・・」
可愛い弟がAと結婚した。
仮想とはいえ、あの番組のリアルさは僕もよく知っている。
嗚呼…
僕はこれからしばらく
どうやって生きていけばいいんだ…(涙)
CM「…またいろんな所でいじられますね…」
メディアやファンがどういう反応をするのかなんて
情報が入って来なくても想像がつく。
CM「…気が重い…」
YN「だよね(笑)」
だけどこれも、事務所のシナリオの一部。
Aはそれだけ期待されているし
大事に育てられている…ということだ。
YN「いつか通る道だとは思ってたけどね〜…(笑)」
CM「まさかこういう形だとは思いませんでした。」
Aがデビューして間もない時期は
アンチが増えることも覚悟で
僕やジンギと絡めて知名度を上げてきた。
だから僕の想いをテレビや雑誌で話すことも
事務所にとっては話題作りに好都合だった。
だけどSMTライブにも出演して
日本でも人気を獲得しつつあるトレボ。
特にAの人気はうなぎ上りで…
世間が楽しく騒いでいる僕らの三角関係も
そろそろ払拭して新しいイメージに塗り替える時期だ…
ミノと仲のいい僕に逃げ道はなく
それはジンギも同じで…
どうせ平気な顔してゲスト出演もさせられるんだろう。
そうやってAとの距離感を
"先輩後輩の仲" に戻して視聴者に認識させる…
結局僕らの生きている世界は
周りの人間の思惑で簡単に操作される
そんなやるせない世界なんだ…
YN「しばらくはやりにくいと思うけど、僕もフォローするから…」
ヒョンの慰めの言葉を聞きながら
CM「…ありがとうございます…」
最後に開いた親友からのメール。
CM「…」
キュヒョンの文章だけはなんだか楽しげで
最初はからかっているのかと思った。
だけど…
『これでやっと脱出だ。おまえの恋がリアルになるいい機会だぞ。』
CM「…脱出…」
その言葉を見て
あぁ…そうか…と
目の前が少し明るくなったような気がした。
メディアに散々もてあそばれた僕の恋心。
世間の意識がそれるのは
こっちにとっても好都合。
事務所の思惑を逆手に取って
リアルな恋にシフトチェンジするチャンス…
CM「なるほど…」
さすが親友。
おまえはやっぱり
いいヤツだ。
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作者名:うひ | 作成日時:2016年1月24日 22時