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するとその時、
「アズール!貴方なにをしているんです!」
「うわ、なにこれ、どーなってんの?」
アトランティカ記念博物館で追いかけっこをしていたはずのジェイドたちが寮内へ駆けつけてきた。その後を追ってきたエースたちの頭には、ついさっきまであったはずのイソギンチャクがない。その異変に気づき、急いで戻ってきたようだ。
「げっ、なんだこの騒ぎ!?」
「アズールが暴れてる……のか!?」
「アイツ、寮生たちの力を無理やり吸い取ってるみてぇだ」
「ヒェェ…レオナ!さてはオマエがいじめたんだゾ!?」
計画にない状況に混乱する一年たち。それはいつしか見てきた光景に似ている。周りを漂う黒いオーラに眉をひそめながら嫌な予感に思考を巡らせる。どこまでいじめればこんなことになるのやら。しかし張本人は計画通りに契約書を砂に戻したまで。文句を言われてご不満である。
「ジェイド、フロイド、ああ、やっと戻ってきてくれたんですね。そこのバカどものせいで、僕の契約書が全て無くなってしまったんです。だから、あなたたちの力も僕にください。ねえ、僕にくださいよぉ!」
もはや狂乱状態のアズールはもう力を手に入れることしか頭にない。自身がオーバーブロット寸前ということでさえ気づいてない。
「お待ちなさい。貴方のユニーク魔法は強力すぎるゆえに、契約書無しには制御できないはず。そんなことをすればどうなるか、自分が一番よくわかっているでしょう!」
「だって、なくなっちゃったんですよ、全部……アハハ……アハハハッ!このままじゃ昔の僕に戻ってしまう!そんな姿、フランに見せられるわけない!」
「あのさー、今のアズールって、昔のアズールよりずっとダサいんだけど」
ジェイドの叱責にフロイドのキツい言葉。それでも今のアズールは留まることを知らない。幼馴染の言葉さえ聞く気はなさそうだ。それに、フランのことを執着しているようでその目はフランを捉えていない。その不気味さにフランはラギーの服を掴んだ。
「アズール……誰を、見て………?」
なにかに怯えるように震え始めたフラン。頭には利用するために築き上げた薄い関係の人たち。彼らが見ていたのはフラン本人ではなく、ユニーク魔法のフラン。彼らが向けている笑顔が本物の自分じゃないことへの不安や恐怖が、フランのなかで湧き上がる。
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作者名:白黒-モノクロ- x他1人 | 作成日時:2022年9月2日 22時