2weeks ago ページ2
.
(side RED)
真っ白な病室で、規則的な音を立てる機械に囲まれた、目を閉じたままのA。
傍らに座る俺は、まだこの状況を受け入れることが出来ずに呆然と彼女を見詰める。
中「…しげ、」
重「まだここにおる」
桐「…ん、傍におったり」
ベッドを囲うように立っていたメンバーが散り散りになって、残ったのは俺一人。
本来仕事だった予定を何もかもキャンセルして全員がここにおるから、俺だってほんまは全部の感情に蓋をして、仕事に戻らなあかんのは分かってる。
分かってるけど。
痛々しいくらいの点滴に繋がれて、静かにゆったりとした呼吸を繰り返すAは、俺やメンバーがどれだけ声を掛けても返事もせえへん。
大きな怪我がない事が不幸中の幸いで、でも不幸な事には変わりなくて。
涙すら出えへんほどの戸惑いと悲しみを抱えながら、ひとりシーツに顔を埋めた。
管の繋がれた手を握るけど、握り返してくれるはずもなくて。
搬送されたって連絡を受けてからの記憶も曖昧で、気付いたらAはベッドに横たわってたし、俺はベッドの横でただAの名前を叫んでて。
今は、ゆっくりと繰り返される呼吸だけがAの生きてる証。
その音を聞きながら、自分を落ち着かせるように呼吸を揃える。
ぽつりぽつりと話しかける俺に、いつも楽しそうに笑ってくれる可愛いコイツからは何一つ反応がなくて。
重「…なあ、起きろや」
帰ろう。
声を掛けてすぐ、響いたノックの音にゆっくりと振り返る。
控えめに開いた扉からチーフマネージャーが顔を覗かせて、面会時間の終了を告げた。
嫌やって言うても、意味無いことは理解してて。
まだ一緒におるって駄々こねても、宥めてくれるAはただ静かに息をしてるだけ。
握り続けた手を、ゆっくりと離す。
ぼんやりと玄関の前に立って、力無く鍵を開ける。
この扉を開けてもAはおらん。
ああ、晩飯作ってくれる約束してたのに。
明日、ふたりとも午前オフやったのに。
言い表せへん悲しみに打ちひしがれながら、ドアノブに手を掛けた。
「おかえり」
重「……」
「…あっ見えてへんか」
重「……は、？」
「あ、見えてる？おかえり、しげちゃん」
重「………ただい、ま、」
愛しくて仕方ない俺だけの天使は、最高の笑みを浮かべながら、俺を大混乱の渦の中へと投げ込んだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 438人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
竜胆(プロフ) - ささん» ありがとうございます〜！とっても嬉しいです。完全なる見切り発車なもので過程もオチも何も、という状況ですが、楽しんで頂けるように精進致します。素敵なお言葉をありがとうございました、糧になります。 (7月13日 22時) (
レス) id: 4b185b5ed0 (このIDを非表示/違反報告)
さ - さあ、進もうよ、姫。毎日とっても楽しませてもらっています！コメントもマシュマロもやったことなかったのですが、全作品読んでます！いつもとってもおもしろいです！わすれないでいてねもとってもよかったので、toBE HAPpy !! も楽しみにしています！ (7月13日 21時) (レス) id: 56608c727e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：竜胆 | 作成日時：2023年7月13日 18時
