君に出会えて【QK】 (ページ2)

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【第一章】　出会いページ2

kwkm side
思わず、眠くなってしまうような暖かい陽の光を避けるように、俺＿＿＿川上拓朗は大きな木にもたれかかって座っていた。
木陰が、俺の一部分を明るく照らす。

学校の中庭にある木なので、遠くから女子達の大きな笑い声や騒ぎ声が聞こえてくる。
そんな楽しそうな雰囲気の中、俺は一人である紙と向き合っていた。

「･･･はぁ」

無意識にため息が出る。
今、俺の手に握られているのは原稿用紙。そこには、端までびっしりと書かれた文章と、何回も赤いペンで修正したような跡がある。

･･･そう、俺は小説家だ。
まぁ、小説家とは言ってもまだあまり、名は知られていないが･･･。

中学生の頃、軽い気持ちで始めた小説のネット投稿。元々、国語は得意な方だったし、なんとなく友達とか出来ないかな･･･という思いしかなかったのだが･･･、まさかとてつもなく反響が来て、編集者までつくとは思ってもみなかった。

それから、高校生になって投稿していた小説をある出版社さんに本にしてもらったりして、一時期は「天才高校生小説家！」みたいな肩書きで話題になったりもした。

しかし、そんな流行なんてすぐに過ぎ去るものだ。
話題だった時は足りなくなっていた本だって、今では売れ残るくらいにまで来ているし、筆者である俺もスランプ気味のようなものになって、まったく文章が書けなくなってしまった。

「･･･どうしたら良いんやろ」

と、ぽつり呟く。
小説のアイディアも思いつかない、小説を書く気にもなれない･･･、そんな奴が小説家なんかやって大丈夫なのか？
これでは、小説家を目指している方々に失礼ではないのか？
日々、そんな言葉が脳裏をよぎって、自己嫌悪に陥ってしまっていた。

すると突然、携帯電話の着信音が鳴った。
誰だ、と思って見てみると、そこには現在の俺の編集者の名前があった。

「＿＿＿もしもし、志賀さん」

編集者の名前は、志賀玲太さん。
東京の某美術系大学に通っていたらしいが、何故か小説を編集する仕事を急にやってみたくなったらしく、小説家の編集者になった･･･と初めて会った際に話していた。

『もしもし？川上くん？』
「･･･お疲れ様です、川上です」

『急にごめんね、今大丈夫？』
「あ、はい。大丈夫です」

思わず、俺は背筋をピンと伸ばす。