理想なる夢魅３ ページ4
「ただいま。」
玄関の方から、そんな優しい声が聞こえた。
「お帰りなさい。早かったですね。」
「思ったより仕事が早く片付いたんだ。」
靴を脱ぎ、我が家へと踏み込んでいく彼。
いつもならリビングに向かう筈なのに、今回はそこを通り過ぎ、何故かキッチンの方へと歩いていく。
「…もしかして、料理本の事です？」
そう尋ねれば、少し驚いた顔をした彼が振り返る。
「あ、ごめんなさい、キッチンに置いてあったから…」
「……あぁ、そっか。」
スッと、彼の瞳から温度が消えた。
ゆっくりと私に近寄ると、ぎこちない笑みを浮かべたまま私の肩を掴む。
「それで、中は読んでないよね？」
ね？と、悲願するような声色。今まで聞いたことのないその声に、思わず狼狽えてしまう。
何だろう、読んではいけなかったのか。でも、内容は何の変哲も無い、普通の料理本だった筈だが。
「えっと、パラパラーとは…あと、あの、便箋を…」
素直にそう白状すれば、どうやらそれがいけなかったのか、彼の顔が曇った。不味いと、そう思うと同時に言わなければ良かったと、先程の言動に激しく後悔した。
「…それで、君はそれを読んで何か感じた事は？」
「あ、ありません。ただ、仲が良いのかなって…」
真意を探るように、濁すようにそう話せば、彼の表情はみるみるうちに和らいでいく。どうやら、この回答で正解だったらしい。
彼の顔色に、小さく安堵の息を吐く。
「そう、ならいいんだ。
ごめんね、怖がらせてしまったよね。」
料理本を見ながら作っていた事がバレたのが少し恥ずかしくて と、何とも可愛らしい理由を述べられる。それを彼が言っている事に、更に微笑ましさはさらに上乗せされる。
先程感じた恐怖など、緩和されるどころかすっかり無くなり、絆された私は笑顔を浮かべた。
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千里(引退済み) - りゆさん» お久しぶりです、そして本当にごめんなさい。身勝手なことをしたと自分でも思います、貴方の感想を思い出してこの小説だけは完結させなければと最後に戻ってきました。長い間、お世話になりました、私もずっと好きです。 (2018年1月23日 20時) (
レス) id: eb6390febc (このIDを非表示/違反報告)
千里(引退済み) - 満月雪兎さん» 失礼ではなく光栄という記憶しかありませんよ！ありがとうございます、読者様の感想が私の心の支えでした。未練がありもう一度戻ってきましたがもう更新の予定はありません、ごめんなさい、そして、今まで本当にお世話になりました。 (2018年1月23日 20時) (レス) id: eb6390febc (このIDを非表示/違反報告)
りゆ - 千里さん…！お久しぶりです、そして完結おめでとうございます。千里さんのお話の中でも日々樹渉に次いで、このお話が本当に大好きです。あなたのお話がもう読めないと諦めていたので、涙が出そうです。いつも素敵なお話をありがとうございました！ずっとすきです！！ (2018年1月18日 0時) (レス) id: 3ad6ab11ab (このIDを非表示/違反報告)
満月雪兎 - これからも更新頑張ってくださいね。長々と失礼致しました。 (2017年5月14日 1時) (レス) id: 023c1ff95b (このIDを非表示/違反報告)
満月雪兎 - こんにちは。覚えていらっしゃるでしょうか？以前「一億の顔より中古のバイク」にて、クソ失礼な発言をした満月雪兎です。千里さんの作られた作品を全て拝読させて頂きました。どれも長ったらしく無く、読みやすく、それでいて深い物語ばかりで私は大好きです。 (2017年5月14日 1時) (レス) id: 023c1ff95b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千里 | 作成日時：2017年1月23日 18時
