tokyo2pm36floor：3rd

11:30 p.m. ページ9

*





それからというもの、元々忙しかった私と
バンド活動が軌道に乗り始めた洋平くんとは
あっという間に会う時間がなくなった。




私の休みの日に連絡を入れてみても、
洋平くんが仕事ということが多くなり


以前はツアー中でも、ちょこちょこ合間を見つけては
会いに来てくれていたけど


今はそんな時間すら作れなくなってしまうくらい、
バンド活動が順調なようだった。




今までは、洋平くんが暇な時に
遊びに来てくれてたからなー・・・。




それならと私の方から会いに行こうと思い立って、
でもプライベートではなかなか会えないから
スタジオにお邪魔して差し入れなんかをすることもあった。




でも、全員曲作りにはすごく真剣だから
あまり話をすることも出来なくて、


洋平くんたちが紡ぎ出す音を聞いているのは楽しかったけど
仕事の邪魔になるかもしれないと思うと
少しだけ見学して帰ることの方が多かった。




私が空いている時間に4人暮らしの部屋を訪れても、
洋平くんどころか誰もいないことの方が多くて




「今日もスタジオとかなのかなあ・・・」




初めのうちは、もしかしたら早く帰ってくるかも。
なんて期待をしていたけど、
いつ帰ってくるかも分からない部屋の主を
当ての無いまま待つのが次第に寂しくなって


会えないまま、皆んなで食べれるようにと
少し多めに作ったご飯を作り置きして帰ってくることも度々あった。




思うように会えなかったり、
コミュニケーションが取れなかったり、


そんなすれ違いを繰り返しながら過ごしていたその日も
私は洋平くんがバンドメンバーと暮らす家へと向かっていた。





*

+→←+

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す