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「……あぁ、来てしまったわね」
森の奥の大きな屋敷。
その前に立ち、茉莉は思わず嘆いてしまった。
老女の一方的な約束通りに迎えに来た車に乗ることに直前になっても渋っていた茉莉だったが、抵抗する間もなかった。
あれよあれよと言う間に車に乗せられ、あっと言う間に森の中へと連れ去られてしまった。
お抱え運転手がいるなんて水無瀬家とは裕福な家なのね、と思いながら。
明るかった外も、車に乗っている間に日が暮れて暗くなってしまった。
長時間の移動で道も覚えられなかったため、帰るすべはない。
諦めて、茉莉を呼んだ老女の話を聞くしか他はない。
「よく来たわね! さぁ早く中に入って話を聞いてちょうだい!」
呆然と立ち尽くしていた茉莉の背後に、いつの間にか電話の声の老女がやって来たようだ。
茉莉の背を、老女にしては力強く押して、屋敷の中へと連れて行かれる。
「ちょっ! ちょっと待ってください!」
「話は中で聞くわ!」
どちらが依頼人なのかよく分からない。
茉莉はまた諦めて、大人しく老女にされるがままに連れて行かれた。
連れて行かれた場所は、豪華な調度品が並べられた、これまた豪勢な応接間。
そこにはすでに三人の人物がいた。
十歳ほどの幼い少女。
そして彼女の両親か、中年の夫妻。
彼らは少女を真ん中にして、一つのソファに並んで座っていた。
茉莉が現れたところで彼らは無言だった。
老女は奥の一人掛けのソファに、茉莉はその向かいに置いてあった一人掛けのソファに腰を掛けた。
コホンッ。と、老女は咳払いをして口を開く。
「名探偵を呼んだわ!」
「……“名”探偵ではないですが――」
「そんなことはどうでもいいわ! 『探偵』を呼んだことが大切なのよ!」
老女が高らかに宣言する。
「さぁ! 誰が殺されるのか当ててちょうだい!」
「――はっ?」
茉莉が驚きで呆然と口をしばらく開けてしまったのは仕方がないと思った。
しかし、いつまでもそうしているわけにはいかない。
ハッとして軽く頭を振り、おそるおそると老女へと尋ねた。
「……あの、それは一体どういうことでしょうか?」
なんの説明もないままに屋敷に連れて来られた割には言葉を選んだつもりだった。
しかし、老女は呆れたように肩をすくめて笑った。
「言葉通りよ! この中で誰が殺されるのか推理してちょうだい!」
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夏川夏恋 - 探偵・あいみさん» はじめまして!コメントありがとうございます!面白いとの感想をいただけて、とっても嬉しいです!続きを望んでいただけたのはとてもありがたいのですが、普段書かないジャンル&文体で結構苦労したのでシリーズ化する予定はありません…すみません… (2020年8月27日 22時) (レス) id: 65feaaeb42 (このIDを非表示/違反報告)
探偵・あいみ(プロフ) - ふわぁ。めっちゃ面白い…。続き早く…! (2020年8月27日 22時) (レス) id: f29b167efb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏川夏恋 | 作成日時:2020年8月25日 20時