名前/2 ページ3
未だに笑っている赤目を見て、少し心が温かくなった。なんというか、数ヶ月前はあんなにボロボロで、泣いたり悲しそうな表情ばかり見せていたのに、今ではこんなにも笑顔になっている。
勿論、他の皆もだ。
未だに心を開いてくれない奴もいるが、この本丸には笑顔が増えてきている。何より雰囲気が明るくなった。審神者としても、俺自身としても、喜ばしい事だ。
赤目を見つめているとコイツも笑うのをやめる。
「何?そんなに見つめて。顔になんかついてる?」
『いや、別に?なんもねぇけど』
「嘘、絶対なんかある」
『なんもねーっつの』
赤目ちぇっとわざとらしく舌打ちをして唇を尖らせる。ンな小っ恥ずかしいこと言えるか。
ふと赤目の手に目をやると、爪が綺麗な紅で染められていることに気づく。ボロボロで剥げてしまっていた以前のそれとつい比べてしまって、少し…嬉しくなった。
『爪、塗ったんだな』
「うん。主が新しいの買ってくれたし、早速塗ろうと思って。安定も皮肉交えながら褒めてくれた…気がする」
『安定…ああ、ポニテか』
「また変な呼び方だし…」
『ポニテじゃん』
「まあそうだけど…俺の呼び方と大差ないのがちょっとムカつく。前みたいに名前で呼んでよ」
『やーだ』
「けち!」と赤目は頬を膨らませ、よくわかんねえけど唸り始めた。女かテメェは。あの時以降はずっと赤目って呼んでんのに今更どうしたよ。そんなことを考えていると急に静かになった。彼の言葉を待っていると赤目は口を開いた。
「…あんまり名前で呼ばれないと、俺の名前、忘れちゃってるんじゃないかって……」
俯いて寂しそうな声を出す。すると短刀達から大きな声で呼ばれる。続いて「一緒に遊びましょー!」と。
同じく大きな声で「ちょっと待っててくれー」と返事をする。元気な声が聞こえて来たのを確認し、靴を履く。
未だ俯いている清光の前に立ち、頭をぽん、と優しく撫でた。顔を上げる清光と同じ高さに合わせ、しっかりと目を見て俺は口を開く。
『大切な家族の名前忘れるわけねーだろ、バカ』
くしゃくしゃと頭を撫でて清光に背を向ける。「あるじ、」となにか言おうとした清光の言葉を遮り、
『じゃ、短刀達と遊んでくるわ。誰かに見られる前にちゃんと泣きやめよ、“清光”』
と口にする。そのまま歩みを進めると後ろから「主ぃ〜!!」と先程よりも明るい赤目の声が耳に入る。俺は笑みを浮かべながら、短刀達が集まっている場所へと向かうのだった。
熱に浮かされただけ/1【薬研藤四郎】side薬研→←名前/1【加州清光】
824人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リッツ*(プロフ) - 令恩さん» コメントありがとうございます!お待たせしてしまい申し訳ありません(汗)嬉しいお言葉ありがとうございます...! (2018年11月4日 19時) (レス) id: 5d1926a658 (このIDを非表示/違反報告)
令恩(プロフ) - 待ってましたー!え?大将可愛すぎ (2018年11月4日 1時) (レス) id: 163bbcf1b4 (このIDを非表示/違反報告)
リッツ*(プロフ) - 響也さん» コメントありがとうございます!大変長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした…。久しぶりだったので不安でいっぱいでしたが、そう言っていただけてとても嬉しいです!ありがとうございました! (2018年3月21日 18時) (レス) id: 5d1926a658 (このIDを非表示/違反報告)
響也 - 続編おめでとうございます!待ってました(*ノД`*)・゚・。主人公くんかっこよすぎますね...! (2018年3月21日 15時) (レス) id: 90be5980ad (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ