懼懼れ！ナガムシちゃん【繰繰コク】 (ページ2)

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第壱憑目・這い寄る白き混沌ページ2

妾(わたし)は上機嫌だった。

目的の家を目指して、
鼻唄交じりにずんずん進む。

妾は今日から新しい家に
住む事になったのだ。
…無断だが。

新しい家と言っても、何も新築ではない。
もう既に何匹も取り憑いているような、
立派だが古い家だ。
逆に賑やかで楽しそうだな、と妾は心踊る。

屋根裏だろうと、軒下だろうと、
なんなら土の中だろうと、
ある程度雨風を防げるのならば妾は有難かった。

「おっと、見えてきたな」

角を曲がれば、そこには目的の家があった。
人の子が一人で住むには広すぎるくらいな、
大きくて立派な和風の建物。
表札には「市松」と記されている。

「それじゃ、お邪魔しますよ～」

妾は不法進入をミッションインポッシブるべく、
誰にも見つからない様に音を立てずに進む。

家主の少女は今は不在の様だ。
代わりに、狐の妖が庭で洗濯している。

妾は縁の下に潜り込んで、お引越し完了。

マイホームも無事決まり、
「ふぅ」と一息付くと、
どこか嗅ぎ慣れた懐かしい臭いを感じた。

その臭いが旧友の物だと気付くのに、
それほど時間はかからなかった。

「へぇ、アイツもここに取り憑いてんのか」

今ここに居るのかな？
だとしたら挨拶くらいしておくのも悪くない。
ついでに家中探検するのも楽しそうだ。

「よし、」

妾は相変わらずの上機嫌で、
新たな我が家をずんずん進む。