【ルパパト】ちらしの裏(4)

51-2 ページ5

いた、とユキが足を止めた。顔を上げればノエルさんがいた。目をまん丸に広げている。

「A、ちゃん…」

ノエルさんの声が、つらい。ユキが私の肩をポンと叩いて、その場を後にした。二人きりにしてくれた。ノエルさんの方を向く。喉が、痛い。

「…っあ、ノエル、さん。で、電話出てくださいよ…」
「え？…ああ、ごめん。気付いていなかった」
「そう…ですか…」

ゴーシュの言葉の意味を聞きたい。聞きたくない。聞かなきゃだめ。ゴーシュの言葉が本当だったら、本当だったらどうしよう。グッとこぶしを握る。でも、でも。

「………」
「ノ、エル、さん」
「なに？」
「人間じゃないって、ほんとう？」

ノエルさんの瞳がさらに開かれる。瞳が揺れる。ああ、泣きそうだ。私もノエルさんも。聞かなきゃ良かった。答えなくてもわかる。表情で分かってしまう。ノエルさんがひどく傷ついている。聞かなきゃ、良かった。ぎゅうぎゅうと拳を握る。

「誰に、聞いたの？圭一郎くん？怪盗くんたち？」
「ゴーシュっていう、ギャングラー」
「ゴーシュ…」

視線を落としたノエルさんから目を逸らしたくなる。逸らしちゃだめ。苦しい。息が苦しい。否定してよ、僕は人間だって言ってよ。

51-3→←51-1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す