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酔ったAさんがうざい絡みをしてきたらどうしようかと思っていたが、そんなことはなかった。ないが…。
「これはこれで面倒くさい」
グラスを両手で握りしめ、グラスに酒を注いだ先から飲む。最初はロックにしていたが、あまりにペースが早いのでかなり薄い水割りに切り替えた。酒はなんでもいいらしい。今彼女のグラスの中身はウーロン茶だ。酒でなくてもいいらしい。ペースは変わらない。ぼたぼたと両目から涙をこぼしながら飲んでいる。初美花が困ったように時折涙を拭いていたがもう諦めて泣かせている。
「ほんと、よく泣く…」
魁利が溜息をついた。気持ちは分かる。酒に誘ったのは少し後悔している。魁利が缶のプルタブを開けて口に運ぼうとしたとき、Aさんはそれを阻止した。缶の口を手で覆うようにしている。
「なに」
「お酒は二十歳になってから、だよ。魁利くん」
カラフルなパッケージで気付かなかったが、そこにはアルコールであることが書かれている。
「酔ってんじゃねーのかよ」
「酔ってるよぉ。でもそれとこれとは別」
「Aちゃんって本当いつでも冷静。…でもないのか、この涙は」
じーん、と鼻をかんでティッシュをゴミ箱に捨てる。ゴミ箱はティッシュだらけだし、Aさんの鼻は赤い。
「俺だってちょっとくらい飲んでもいいじゃん。どうせあとちょっとで二十歳になるんだし」
「だったら尚更」
「2人ばっか飲んでずりい」
「なにがずるいのか。私だって透真くんだって二十歳になるまで我慢したんだから。二十歳になる前に飲んだらそっちの方がずるい」
「…そうだけど」
「二十歳になったらいいお酒プレゼントしてあげるから」
「マジで?」
「私も先輩からプレゼントして…」
Aさんの言葉が不意に途切れた。顔を見れば辛そうに眉間にシワが寄っていた。魁利が持っていた缶を奪い、手に持っていたウーロン茶を魁利に渡した。自分が飲んでいるのは酒ではないことに気づいていたか。グッと缶の中身を煽る。
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りいか - クッソ好きだ…………!なんだこのドストライクゾーン!!これからも執筆頑張ってくださいっ! (2021年8月7日 2時) (レス) id: 6698df4412 (このIDを非表示/違反報告)
わたる(プロフ) - まるさん» ご指摘ありがとうございます。 (2018年11月4日 22時) (レス) id: 33016a5e7b (このIDを非表示/違反報告)
まる - オリジナルフラグをちゃんと外して下さい (2018年11月4日 22時) (レス) id: d1b5e30223 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わたる | 作成日時:2018年11月4日 22時