新たな快盗―――黄 ページ6
―――詩穂side
「はい、できたよ」
「ありがとうございます、すみません、手伝ってもらっちゃって」
Aさんから原稿を受け取る。雑誌に投稿するための漫画の原稿だ。漫画を描いていると言ったところ、Aさんはキラキラ顔を輝かせて、すごいすごいと言ってくれた。
「でも、私、まだ漫画家じゃないし」
「漫画を描いてる人は漫画家でしょ。自分が頑張っていることは自信持っていいよ」
「そう、ですか？」
「うん。すごいよ」
Aさんはとっても自分に自信がある。印象的なのはノエルさんから情報集めを頼まれたときに、どうやら難しい事をしなきゃいけなかったらしいんだけど、ノエルさんが「できる？」って聞いたらAさんは迷わず「やる」と答えた。出来るかどうかじゃなくて、やる。Aさんは戦えないから、それしか出来ないから、と言ったけど、それこそ私には出来ない。すごい強い人。
そして、それと同時にすごく可愛い人だ。私達に笑顔を見せてくれているが、私達に見せる笑顔とノエルさんに見せる笑顔は違う。ノエルさんに見せる笑顔は、嬉しさと楽しさとほんの少しの苦しさが混じっている感じ。2人が話している姿はとっても楽しそう。
そういえばこの間、ノエルさんが床に座って空中に出したモニターを見ていた。VSチェンジャーのメンテナンスらしいけど、見ても何がどうなのか全くわからない。ノエルさんも進みは良くないのか難しそうな顔をしていた。その後ろからAさんがそーっと近く。そしてそのままノエルさんの背中に抱きついた。
「うわっ、Aちゃん！？」
「えへー。驚きました？」
「うん。とっても」
ノエルさんとAちゃんは顔を見合わせて笑う。ほわほわとした雰囲気がとっても良くて、今度漫画に使わせてもらおう。
モニターにさっと目を通したAさんは、ノエルさんに指摘する。それを聞いたノエルさんはほわほわとした雰囲気を潜め、エンジニアの顔つきになった。Aさんもニコニコした笑みは薄くなり、考え込む表情になる。ただ、Aさんはノエルさんに後ろから抱きついているままなので、いちゃいちゃ継続中だ。ノエルさんの首に手を回して、背中とお腹をくっつけて。愛おしそうに頬を頭に擦り付ける。今度漫画に使わせてもらおう。こっそり、写真を一枚撮った。
終わり
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作者名：わたる | 作成日時：2019年11月30日 22時
