依頼場所 ページ10
探偵社から出ると、まだ日中の日差しが照りつける中、依頼人の女性に付いてその密輸業者の出現先へ向かっていた。
初仕事ということもあってか隣にいる敦は緊張しているらしい。
「とんでもない所に入っちゃった…。」
「まぁまぁ、僕でも続けてるくらいだから大丈夫ですって。」
こちらを振り向いて、敦を宥めている谷崎さんの異能は、太宰さん曰くどうやら戦闘向きでは無いようだ。
「ねぇ〜、Aもどう思う?」
確かに初仕事だと思えば緊張しないことはない。
「…」
でも、私は何も言えなかった。
正直、まだ心が揺らいでいた。
探偵社の人達はみんないい人だし、住む場所も賃金も心配要らない。
けれども問題は、この人達の云う異能っていうのがよくわからないからなんだ。
私の夢に出てくる龍見たいに厨二病の延長線上の人達の集まりなのかもしれない。
「どこかまだ具合悪いの?」
「大丈夫?」
ずっと黙って考え込む私を心配してか、敦や谷崎さんがこちらを覗いていた。
「いや、何でもない。」
「何か有ったらすぐ僕に言ってね。力になれるかも知れないし…。」
谷崎さんの赤っぽい目が、心配そうに八の字形に曲る。
「わかりました…。ありがとうございます。」
「あと、僕には敬語じゃなくていいから!ほら、どうせ歳も大して変わらないし。」
そういうと谷崎さんはニコッと微笑んだ。
どうやら敬語を使う私の口調に距離感を感じたらしい。
しかし生憎、今の私にとってその笑顔は毒でしかない。
「わぁ、、あなた、可愛い…!ナオミにも、タメ口で結構ですわ!!お人形さんっ!」
「…あ、ありがとう。」
自分の価値観のために助けてくれた探偵社のみんなを裏切ろうとしている事に、どうしようもない罪悪感がわいてくる。
「A、なんかあったら言ってね?ぼ、僕達…、少なくとも、Aがそう思って無くても、その…」
「着きました。」
敦が最後まで言い終わらないうちにどうやら依頼人の云う目的地に到着したらしい。
なんて言おうとしたのか聞くと、「この仕事が終わったら、後でいうから」との事だった。
気になることは気になるが、本人が後でと言ったのだからこれ以上はきけない。
(まぁ後での楽しみが増えたからいいや。とりあえず今日出て行くのはよそう。仲間に囲まれて過ごすのもいいものだ。)
こうして、私はこの探偵社という組織に、結局つなぎ止められてしまうのだった。
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華月姫(プロフ) - 鴻さん» こちらこそありがとうございます!はい、一緒に人気作者になれるよう頑張りましょう(*^_^*) (2017年6月8日 18時) (レス) id: f5f2dd91a6 (このIDを非表示/違反報告)
鴻(プロフ) - 華月姫さん» ありがとうございます!!私も華月姫さんのイベントの繁栄をお祈りしています。お互い頑張りましょう!o(^-^)o (2017年6月8日 17時) (レス) id: 85ba8e2866 (このIDを非表示/違反報告)
華月姫(プロフ) - 最後に、これからも更新頑張ってくださいね!(^^)!応援してます!! (2017年6月8日 17時) (レス) id: f5f2dd91a6 (このIDを非表示/違反報告)
華月姫(プロフ) - イベント参加ありがとうございました!読むの遅くなってすみませんでした。お話読みましたが表現の仕方がとっても上手ですね!!私には出来ない…( ;∀;)。それにお話とっても面白かったです!文を書くのが上手なんですね!羨ましいです (2017年6月8日 17時) (レス) id: f5f2dd91a6 (このIDを非表示/違反報告)
鴻 - すみません。忘れてました。わざわざご忠告ありがとうございます。 (2017年6月2日 20時) (レス) id: 85ba8e2866 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鴻 x他1人 | 作成日時:2017年6月2日 17時