俺たちの青春！2【東海オンエア】

負けない ページ15

虫眼鏡side





Aは、未だに車を持ってない。


きっと帰る足が無いだろうなと思ってライブ終わりを待っていたら、なかなか出てこない。


待たれる方が迷惑なんだろうか。既読だけつけられた僕のメッセージ。



たまらず電話をかけると、ワンコールで繋がった。


少し震えた声のA。








電話を切って1分もしないうちに、僕の車を見つけて走ってくる赤髪の女の子。




「ごめん、お待たせして。た、…虫さんありがとう」


虫「ううん、僕が勝手に待つって言ったから。

ていうかそろそろ車持ちな？笑」



なんだ。電話越しの声で、もしかしてあのボーカルに何かされてるのかって心配になったのに。


「来てたなんて知らなかったよ、恥ずかしいじゃん」


何だかやけに晴れ晴れした顔をしてるじゃないか。

もしかして、

元彼がちゃんといい男になってて、より戻したとか？


だとしたら震えてた声は、告白されて嬉しくて？





……僕が口を出せた立場じゃないのに、どうしてあーだこーだ考えてしまうんだろう。


この気持ちが何なのか、なんて野暮なことを思うほど、馬鹿じゃないはずだ。



好きなんだ僕は。

まみこのことが。




「どうしたの、虫さん泣いてるの？」


虫「別に？泣いてないよ」


嘘みたいに女々しいじゃないか、僕。

「珍しい、そんなに私の演奏感動した？笑」


虫「…感動したよ。ボーカルの彼もかっこよかったやん」



「あの人のことは私の前では褒めないでよ。」


虫「なんで？」



「…またボロカスに言われたから」


動画だったら、ボロカスなんて女の子が言わないの。とたしなめるところだけど。



虫「それ…大丈夫だったの？」



「高校の時、浮気されて、開き直ったあいつに言われた一言が、『美人だったから相手してやったのに』だったの。」


何も言えなくなる僕。



そりゃそんなことを初めての彼氏に言われたら引きずるに決まってるわ。



「さっき、迎えが来てるって言ったら、

彼氏いんの？どうせそいつ顔目当てだろ、って」





アイツ……ぶっ〇してやろうか？




「でもね、その時ちょうど虫さんから電話来てさ、思い出したの。

中身を見ててくれる人、ここにおるやんって」



そう言って、僕の顔を見て笑うA。



虫「…ちゃんと分かってるやん。」


「うん。もう負けないんだ、あんなのに」





横にいるAの顔を見る。


まっすぐ前を見て、


少しだけ自信がある表情。




虫「強くなったね。」

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