俺たちの青春！2【東海オンエア】

大丈夫じゃない ページ12

りょうside



まみこが出ると言ったフェス。


俺はそのバンドのボーカルを知っている。


というか、陸部だったてつやもゆめまるも、クラスメイトのしばゆーも、名前を聞けば知ってるはず。


…長年、俺らが決してAの前で口にしなかった奴の名前。



り「まみこ、大丈夫なの？ アイツでしょ？そのバンドのボーカル」


「うん、智樹ね。」


ゆ「…えっ」


て「…いいの？まみこ」


し「あいつバンドやってたんだ、知らんかった」



サブチャンのカメラを止めた虫さんは、何が？と俺らに説明を促す。



虫さんととしみつは高校時代のまみこのそれをちゃんと知らない。



「あー、えっと、高校の時の元彼！でもヘルプするのはこの1回だけだし、私もあれを引きずるほど弱くないし！」


だから大丈夫！って笑ってみせるけど。




「そんなことより先に夜ご飯買いに行こうよ、りょうくん！」


り「…いいよ。みんな何欲しい？」


虫「あー、僕は夜帰るよ。でもお茶飲みたい」


し「わたくしも夜は帰りますかねぇ」


て「じゃあ俺チーズ牛丼で」


みんなのリクエストを聞いて、晩ご飯の買い出しのために車を走らせる。




り「A。本当に大丈夫？」


「智樹のこと？大丈夫だってば」


り「それはうそです。だってさっき笑顔引きつってた」


信号待ち。赤のライトに照らされたAの顔を覗き込む。

Aのことはお見通しだよ？と俺がいうと、


「……いつまでもトラウマなの、やっぱり良くないよね…？」

大きな目が少し潤む。

ほら、やっぱり大丈夫じゃない。





あれ以来、何に対しても常に自己嫌悪に陥ること。


お父さんとの軋轢で、親に見離されたという気持ちがあること。


自分なんかに好意を寄せる人を信用できずに、受け入れられないこと。

大学時代にそれを克服しようとして、虫さんの後輩と付き合ったけど、やっぱり受け入れられずに長続きしなかったこと。


なのに、人を好きになっていること。




ぽつりぽつりと話してくれた過去は、俺が知ってたよりも根深くて。



「ね？拗らせ女なの、私。笑」


ずるいよ、女の子扱いを嫌がって強がるくせに、不意に見せる弱さはちゃんと女の子で。



俺がまみこを好きなのも知らずに、「別の誰かを好き」になってることを俺に話すから。



り「Aが「好き」を信用できるまで、待てるよ？俺なら」



緊張で乾いた喉から、少し掠れた声が出る。



Aは何も言わなかった。

ライブ→←･

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す