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story57 文化祭シーズン ページ15

陽毬side


ワカメ頭は皿の落ちた音でこちらを向き、棗に気づいた。恐れと焦りが混じったような顔で棗の顔、そしてその隣にいる僕の顔を一瞥してから、ワカメ頭は平静を取り繕うように言葉を続けた。

彼の口から出るのは危険能力系の悪口ばかり。延々と続く言葉に嫌気がさしたのか、棗はワカメ頭の髪の毛に火をつけ席を立った。

前回も棗のアリスで痛い目を見ているというのに懲りない人だ。学習能力がないのか、何としてでも僕らを馬鹿にしないと気が済まないのか。

髪が焦げてちりちりになったワカメ頭を見ると気分がスカッとした。流架は体質系の人に連れて行かれてしまったから、僕は棗を追いかけ中庭へ向かった。


大きな木の影に入ると、近くの茂みから犬が飛び出してきた。何も知らない顔で無邪気に笑うその子をそっと撫でてやると嬉しそうに尻尾を左右にブンブンと振った。

僕も棗も流架の影響で動物が大好きだからしばらくその子と戯れる。お互い言葉は発しなかったけど、こうしていると先ほどまでのイライラが薄れていくようで心地いい。

そこへ、両手に文化祭のパンフレットを持った星なしがやってきた。棗が一瞬だけ星なしに目をやり、すぐにそらす。星なしは先ほど棗に髪を焦されたのを思い出したのか後ずさる。そのとき地面にパンフレットをばら撒いてしまった。


「どいつもこいつも『文化祭、文化祭』。……何が楽しいんだか。」


その中の一枚を拾い上げて、棗が独り言のように呟く。その声色は少し悲しそうで。

普段大人びた行動をとっているが僕らはまだ子供だ。周りと同じ楽しみを共有できないのはすごくつらい。自分だけその場から切り離されているような疎外感を感じる。棗もきっと同じ気持ちだろう。


「あんなのただの『アリス品評会』だから。外部の人間もさ、自分にとって有益なアリスを持つ人を探すためだけに集まってくるんだよ。」


だけど素直に自分の気持ちを言葉にできないから強がってしまう。プライドが邪魔をして、周りに弱みを見せるのを拒むから、思ってもない言葉を吐いてしまう。それが誰かを傷つけてしまうと分かっていても。

星なしは何も言葉を発しなかった。曇りを知らない瞳を大きく見開いて僕らを見つめて、しばらくそこに立っていた。

少し冷たさを含んだ秋風が強く吹き付け、まだ落ちずに耐えていた木の葉を巻き上げていく。なす術なく地に落ちていく木の葉が、まるで自分のようだと思った。

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えるふぃ(プロフ) - Rumiさん» Rumiさん、ご指摘ありがとうございます!! 火事に直してきました!気が付かず申し訳無いです…。細かいところまで読んでくださってありがとうございます! (2020年5月3日 1時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
Rumi(プロフ) - あの71話の火事が家事になってますが…。 (2020年5月3日 1時) (レス) id: 29532e4533 (このIDを非表示/違反報告)
ひらり - 30話目のアリス祭のとこのワカメさんのセリフ「ああ忘れる所だった。不人気どころかー...」が蜜柑のセリフになってるぞー。 (2014年4月12日 10時) (レス) id: 057e594f88 (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - チェナさん 間違いを教えて下さりありがとうございました。助かりました。 一応気付いたところは直しました。 また 何かあったら言って下さいm(_ _)m (2013年12月25日 22時) (携帯から) (レス) id: 39d6b953a1 (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - アルト(οπο)さん» アルト(οπο)さんありがとうございます。 初めて自分の作品にコメントを戴きをその上誉められるなんてとっても嬉しいです♪ これからも書くの頑張ります(≧∇≦) (2013年12月2日 0時) (携帯から) (レス) id: 39d6b953a1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えるふぃ | 作成日時:2013年11月29日 23時

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