マジデヒトメボレ（SZ短編集)

you are mine（風磨）10 ページ39

それから更に一週間が経った水曜日。

３回目、最後の料理教室が始まる前、風磨から電話があった。

教室から少し離れた小スペースでAは今にもスキップでもしちゃいそうだった。

「今日で最後だよ。」

「そっか。頑張ってね。」

「…風磨くんは今日もお仕事遅いの？」

「ん。…どした？」

「ううん。やっぱなんでもない。気にしないで。」

どうしてそんなことを言ってしまったのだろう。

いくらもう２０日近く会っていないとはいえ不用意な発言だった。

そんなことを言っても風磨を困らせるだけなのに考えなしに口にしてしまいAはすぐに後悔した。

２人は今までにこんな長い期間会わなかったことはなかった。

お互いに仕事が忙しくてすれ違いになったことはあったがここまで長期的なのは初めてだった。

今回は風磨の仕事量が多く、加えて新曲の振付練習が夜遅い時間にしか出来ずAとどうにも時間が合わせられなかったのだ。

逆にAは会社が閑散期でほぼ毎日、定刻には帰宅していた。

１人の時間を持て余していた。

すると考えることは風磨のことばかりで毎日胸を締め付けられる思いをしていた。

風磨の出ているテレビだとかDVDだとかを引っ張り出してみても余計に会いたいが募るばかりだった。

Aは風磨の仕事の邪魔にだけは絶対になりたくなかった。

だから余計なことはしないと決めていた。

求められればなんでもやってあげたかったけれど、風磨は何も言わなかった。

だからあの日以来、風磨のマンションにも立ち寄っていなかった。

少し前は逆にお互いに仕事が落ち着いていてしょっちゅう会えていただけにぽっかりと空いてしまった時間が寂しくて仕方なかった。

けれど風磨はその分電話をたくさんくれた。

仕事の休憩中に何気ないラインをたくさんくれた。

その優しさが嬉しくて、けれどもどかしくもあって。

大好きが止まらなくて焦がれて胸がぎゅうぎゅう苦しかった。

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