マジデヒトメボレ（SZ短編集)

2019.03.07ー24th（風磨）07 ページ23

「−まくん、風磨くん！」

「・・・んあ？」

「もう夜だよ？寝すぎ。」

「・・・は？え、なに？あれ？どこここ。」

「寝ぼけてるの？風磨くんの家じゃん。ねぇ、もうご飯できたよ？」

「ご飯？さっき食べた…。」

「まだ食べてません。お誕生日だもん、張り切っちゃった。」

食卓には豪華なご馳走。

２人分の。

「なずなと伊吹は？」

「へ？」

「・・・なんでもない。」

あぁ、なんてリアルな。

あれはなんて。

なんてリアルだったんだろう。

子供向けのメニューなんかないんだ。

大人２人分だけの料理。

ダイニングテーブルに子供用の椅子があるわけがない。

だってさ。

俺はまだ、結婚なんてしちゃいない。




「風磨くん、夢見てた？」

「うん。」

「なんかね、幸せそうだったよ。」

「うん。幸せだった。」

「そうなの。」

「女の子と男の子だった。」

「そう。」

「Aが娘のおねしょしたシーツ洗って、俺は２人を公園に連れて行った。」

「えぇー？私、子持ちなの？」

「そりゃそうだろ、俺が父親やってんだから。」

俺がそう言った瞬間にAがぶわっと赤く色づく。

あぁ照れちゃって、まぁ。

可愛らしいね、本当。

「とっとにかく、冷めちゃうから早く食べよう。食べながら聞かせて。」

「うん。」




こんな話をしたら、笑うかなって思ったのにな。

俺の話にAは微笑んで「うん」って優しく相槌をくれた。

なずなの汚したシーツを洗っているとき。

伊吹を足にくっつけているとき。

ご飯を頬張る子供たちを見つめているとき。

そんな顔してたよ、Aは。

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