マジデヒトメボレ（SZ短編集)

one ond only（健人）02 ページ3

言ってやらねば。

ふざけるな。

どっちも好きとかそんな都合の良い話があるか。

俺は簡単に天秤にかけられて扱われるような安い男じゃない。

そんな女はこっちから願い下げだ。

お前なんか、お前なんか・・・

バカ、俺だけにしとけよ。


いっそ彼女を箱に閉じ込めてしまおうか。

誰にも触れさせないように囲ってやろうか。

お前は俺のことだけ見てればいいんだ。

お前のその優しさを他の男にもくれてやるつもりなのか。

今までの俺への優しさを、愛を、半分にして。

俺は、Aだけだというのに。

他には考えられないというのに。



「やっぱりどっちも選べない！」

彼女は喜々として電話を続ける。

いい加減、俺に気が付いたらどうだ？

シャワーの音なんざ、とっくに消えているだろう。

「あーダメ！だってどっちも超かっこいいんだもん！」

キャーなんてミーハーな声を出して、多分ソファの傍らのクッションがボフボフと鈍い音を立てる。

こっちがダメだ。

もういい加減に聞いていられない。

耐える意味も解らない。

浮気とはいい度胸だと言ってやろうじゃないか。

お前なんか要らないと嘘を言ってやろうじゃないか。

そうしてお前は俺だけに縋り付けばいいんだ。

縋り付けばいいんだ。

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