四十七粒。 ページ8
.
「.............。」
「駄目だよ？」
「駄目？」
絶対キスしようとしてる。
風磨は普段からスキンシップが多いんだから
バレバレだよ。
キスもハグもすぐしたがるし。
「可愛いAにしたかったのに」
「もう着くし...」
いつの間にか裏道に入り、
見覚えのある古いアパートは目の前だった。
「あのアパート？」
「そう...二階の一番奥」
そう言った瞬間、
風磨の顔が急速に近づいてきて唇が重なった。
「ふ、ま...」
「大丈夫。俺がいるよ。
何も心配することない。
昔とは違うから」
顔が曇ったのを感じ取ったんだろう。
“昔とは違う”
そうだ。
あの頃は一人だったけど、
今は風磨がいる。
「部屋の前まで行って、名前確認する。」
「うん。それで咲坂だったら、
今日はもう帰ろう。
美味いもん食いに行ってもいいし」
築五十年くらいのボロアパートは
風磨には全然不釣り合いだったけれど、
私達は赤茶のペンキが剥げたよくしなる
外付けの階段をゆっくりと上がった。
ずっと握ってくれている手があるから、
ここまで来れた。
何もかも風磨のおかげだ。
どくんどくん。
どくんどくん。
心臓の音。
「.....まだ住んでたんだ」
ドアの横に貼られたシールには
“咲坂”とあの頃のまま書いてあった。
窓からはカーテンが透けて見えるし、
どうやら人が住んでいることは
間違いなさそう。
心臓がすっと静かになって、
体は落ち着いてるはずなのに...
心が落ち着かない。
「...帰る？」
「う」
うん、と言おうとした瞬間だった。
「...何か用ですか？」
.
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ひなの_FmKn - このお話すごく大好きです...！応援してます！ (2019年3月31日 16時) (
レス) id: c768473685 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ - お話読ませてもらいました！とってもいいお話で泣いてしまいました！続きも気になるので更新してほしいです！ (2019年3月24日 14時) (レス) id: e1ff624753 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：YUi
| 作成日時：2019年2月12日 14時
