十四雫。 ページ14
.
「いえいえ、いいんですよ。こうして今日
来てくださっただけでも、十分ゆかりにとって
何かいい影響があると思いますから。」
そう言われても、めいの表情は曇ったままだった。
黙り込んだのを見て、代わりに俺が質問する。
「それであの...あなたは、」
「ああ、その話をするんでしたね。
私はゆかりが記憶をなくした時
彼女がバイトしていたバーの店長をしていたんです。
一緒に暮らしている人もいなくて、
放っておけないもんでしたから、
時々こうして様子を見に来るんですよ。
バーは夜からですから、昼間は暇ですしね」
事も無げにいうけれど、
その原動力ははたしてなんなのか。
不思議さは感じたが、
そんなことを追及する間もなく
車を止めたところに着いてしまった。
「では、私はこれで。」
「はい。突然お邪魔してすみませんでした」
そう挨拶をしていると、
それまでぼんやりとしていたAが口を開いた。
「.....あの、彼女は、生きてますか」
「うん？」
「恋池ゆかりは、生きてますか？」
少しの沈黙が訪れた。
俺には何も言葉が見つからなかったし、
訊かれているヒロさんも驚いているようだ。
「...うん、生きているよ。」
けれど力強い返事はすぐに返ってきた。
「記憶を無くす前の彼女と、今の彼女は、
何にも変わらない。
恋池ゆかりは、ちゃんと生きているよ。」
「...........ありがとう、ございます」
Aの表情は依然明るい訳ではなかったけれど、
少し顔色が良くて。
俺まで元気になった。
自分でも思うけど、本当単純だ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 759人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひなの_FmKn - このお話すごく大好きです...！応援してます！ (2019年3月31日 16時) (
レス) id: c768473685 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ - お話読ませてもらいました！とってもいいお話で泣いてしまいました！続きも気になるので更新してほしいです！ (2019年3月24日 14時) (レス) id: e1ff624753 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：YUi
| 作成日時：2019年2月12日 14時
