十二雫。 ページ12
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「おふたり、近くに越してきたんだって」
「あら、そうなの?」
ヒロさんが何気なくそう伝える。
「そうなんです。
引退したとはいえ、Aのことをまだ
追いかけている記者なんかもいますので
ご迷惑をおかけするかもしれませんが、
何卒宜しくお願いします」
「わかりましたわ。大変ですねえ」
ヒロさんがこちらを見て一瞬だけ
にっ、と笑った。
上手く誤魔化せたな、という
メッセージを受け取って
こちらもにこりと返す。
「...それにしても、
あのドラマで見ていた方が
今目の前にいらっしゃるなんて...ねえヒロさん」
「面白かったなあ、
ゆかりなんてDVDも買ったんだから」
「そうなんですか。ありがとうございます」
隣のAはきょろきょろと
周りを見渡している。
昔住んでいた家だ、懐かしいんだろう。
「おふたりは本当、仲がよろしいのね」
「あ...そうですね」
少し見つめすぎてしまったようだ。
仲がいいと言われてふっと俺の方を見るめい。
目を合わせて少し微笑んだ。
確かに一般的な夫婦よりも
愛し合ってるとは思う、
というより...俺が好きすぎるんだよな。
ふらふらするAを支えてここまで来たから
Aのことはいつも心配でたまらないし、
だけど俺がいないと
生きていけないんだろうな、っていう
彼女が愛おしい。
「菊池さんは本当に
奥さんのことが好きなのね」
しかもそういう俺の気持ちは
表情からバレバレらしく。
「...ふたりでなんとかやってます。
妻は大切な存在なので」
だが、そのAはというと
曖昧に微笑んだまま、
一言も喋らないのだった。
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ひなの_FmKn - このお話すごく大好きです...!応援してます! (2019年3月31日 16時) (レス) id: c768473685 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ - お話読ませてもらいました!とってもいいお話で泣いてしまいました!続きも気になるので更新してほしいです! (2019年3月24日 14時) (レス) id: e1ff624753 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:YUi | 作成日時:2019年2月12日 14時