十六雫。 ページ16
.
やっと家に辿り着き
エレベーターに焦れったく乗り込み、
階に着いて走って。
ドアを開けると、
玄関前の廊下にしゃがみ込む姿。
「Aっ！」
「ふ、ま...」
顔を上げたAの表情は、
色々な思いを含んでいて。
母親と再会してから
暗い表情をすることも多かったAが、
大分明るくなってきたところだったのに。
「怖い...」
「A。」
「どうしよう...」
「もうひとりじゃないから。」
包み込むように抱き締めれば、
その体は驚くほど冷たくて。
「ほら。あったかいでしょ？
もう、ひとりじゃないよ。」
「ふま...」
彼女からその手を俺の背中に回したのは、
思えば初めてだったかもしれない。
どうにかして安心させたいと、
少し体を離して手を彼女の両頬に添えた。
そのままキスをすると、
強かった腕の力が弱まり
俺のシャツを柔く掴む手。
顔を離してはすぐに重ねて、
何度もキスをすれば
君の表情は柔らかくなってくる。
愛してる、って感情を込めて
ちゅ、と音を立てて離れると
Aはぽやり、と俺の方をあどけなく見つめていて。
「好きだよ...」
傍から見たら、人が倒れたって時に
何をやってるんだって、意味がわからないと思う。
けれどAの場合、愛を注ぐと安心する。
俺がいなくて淋しく、心細くなっていただろうから、
心を落ち着けるために必要なんだ。
「病院行ける？」
「...うん。」
その表情はさっきまでのものとは違う。
ほんの少し落ち着きを取り戻していた。
「.....風磨。」
「ん？」
並んでエレベーターに乗っていると、
隣から控えめに俺を呼ぶ声。
「私も、風磨の事...すき、だよ」
うわ、何これ。
めちゃくちゃ可愛い。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 759人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひなの_FmKn - このお話すごく大好きです...！応援してます！ (2019年3月31日 16時) (
レス) id: c768473685 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ - お話読ませてもらいました！とってもいいお話で泣いてしまいました！続きも気になるので更新してほしいです！ (2019年3月24日 14時) (レス) id: e1ff624753 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：YUi
| 作成日時：2019年2月12日 14時
