Tear drops.

十粒。 ページ10

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撮影が始まってから一週間。




現場の雰囲気にも慣れてきて、
それなりのチームワークが
出来上がり始めていた。









今日は硫と泪が硫の実家に
挨拶に行くシーンだ。











菊池くんのお母さん役は
何度も共演したことのある
ベテランの女優さん。











『馬鹿なの、硫。』


『母さん、』


『こんな子、許さないから！！』












肩を押されて床に倒れ込む私。




ヒステリックになったお母さんが
机の上に乗ったマグカップを持ち、
床にガッシャーン、と叩きつける。




中に入っていたコーヒーが
床一面に散らばった。















『なっ...！』



『出てって！！』



















...そのとき、
右手の小指に微かな衝撃を感じた。








けれど、気にせず演技を続ける。
















『...帰らない』



『え？』



『硫を、愛してるから』














カットがかかった瞬間、
菊池くんが駆け寄ってきた。












「ちょい来て！！」










後ろから背中を押され、
撮影所の外の廊下まで連れ出される。














「...どうし.....っ！ちょ、なにすんの！？」











瞬間、私の右手小指が彼の口にくわえられる。














「いっ.....」












ああ、マグカップの欠片で指が切れたんだ。




ペロリと舐められて、
さすがの私も思考停止状態。













「絆創膏持ってるからっ...」











その言葉に口を離す菊池くん。




けれど、その目は私を捉えて離さない。















「...キス、してもいい？」



「え！？」



「したい」















両手首を壁に押し付けられたら、
逃げ場なんてないじゃない。









厚い唇が触れ合って、蕩けた。




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